子宮腺筋症しきゅうせんきんしょう
最終編集日:2023/3/23
概要
子宮の内側の表面は子宮内膜という粘膜でおおわれ、子宮内膜は月経周期にあわせて厚くなったり剥(は)がれ落ちて月経血と一緒に排出されたりしています。この子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉層(子宮平滑筋)にも発生し、増殖する病気が子宮腺筋症です。子宮内膜が子宮以外の場所で増殖する病気として「子宮内膜症」がありますが、よく似た病態といえます。
患者数は正確に把握されていませんが、子宮摘出術を受けた人の20~60%に子宮腺筋症が認められたという報告があります。
30~40代、とくに40代に好発し、経産婦に多く発症します。また、人工妊娠中絶や筋腫の手術、帝王切開などの既往歴のある人も発症しやすいといわれています。 閉経後は自然に治まっていきます。
原因
女性ホルモンのエストロゲンが子宮腺筋の増殖や維持に関与していることはわかっていますが、なぜ筋肉層に子宮内膜が入り込むのかなどはまだ明らかになっていません。
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症状
強い月経痛と月経過多が特徴的な症状です。
月経過多は強く現れ、夜用のナプキンでも追いつかない、出血が止まらずにトイレから出られないといった事態も起こります。月経過多に伴い、貧血がみられることもあります。また、子宮腺筋症では子宮が通常よりも大きくなるため、なかには腹部膨満感を訴えたり、下腹部が出てきたりすることもあります。
検査・診断
問診、内診と超音波(エコー)検査、骨盤部MRIが行われます。
超音波検査では、大きくなった子宮が確認できます。同じように子宮が大きくなる子宮筋腫とは異なり、成人の握り拳程度の大きさ以上になるのはまれとされています。MRIでは子宮筋層が不均等に肥厚し、筋層内に出血がみられるのが特徴です。超音波検査では子宮筋腫との鑑別がむずかしいこともあり、MRIでの診断は重要です。
また、血液検査でCA125の値を調べることもあります。CA125は、卵巣がん、子宮がんの腫瘍マーカーですが、子宮腺筋症でも値が上がります。子宮筋腫では上昇しないため、鑑別診断に有用です。
治療
子宮腺筋症は良性の疾患で、治療をしなくても閉経を迎えれば、自然に治まる病気です。そのため、症状を伴うものが治療の対象になります。
治療には保存療法と手術(子宮摘出術)があります。
●保存療法
子宮内膜症と同じように、プロゲスチン製剤、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤、GnRHアゴニスト製剤などのホルモン剤を服用することで、病巣を小さくし、症状を改善することができます。また、月経痛については、痛みの元となる子宮の収縮を促すプロスタグランジンを抑えるロキソニンなどの鎮痛薬を用います。出血が強い場合には止血剤を用いることもあります。
●手術
保存療法で効果がみられない、あるいは症状が強い場合には、根治治療として子宮摘出術が検討されます。挙児(妊娠出産)を希望する患者さんに、病巣のみを切除して子宮温存を図る子宮腺筋症核出術が行われていますが、有効性と安全性が確立されておらず、標準治療とはなっていません。
セルフケア
療養中
●妊娠について
子宮腺筋症があっても、妊娠できないことはありません。しかし、流産のリスクは高くなることがわかっています。子どもを望む場合は、主治医とよく相談して治療法や治療のタイミングを選択しましょう。
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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