卵巣嚢腫

らんそうのうしゅ

最終編集日:2022/3/29

概要

下腹部に左右1つずつある卵巣には、良性・悪性を含め、さまざまな腫瘍が発生します。卵巣嚢腫も卵巣にできる腫瘍のひとつで、中に液体がつまった袋状の「嚢腫」ができる疾患です。「卵巣の嚢胞性腫瘍(のうほうせいしゅよう)」と呼ばれることもあります。卵巣にできる腫瘍の8~9割を占め、多くは良性です。卵巣の悪性腫瘍が中高年に発生しやすい一方で、卵巣嚢腫は20~30代の若い世代に多くみられるのが特徴です。

卵巣嚢腫は、嚢腫の内容物によって、おおよそ4つのタイプに分けられます。


・漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ)

粘度の低いさらさらした液体がたまるもの。もっとも頻度が高い。

・粘液性嚢腫

ねばりのあるゼラチン状の液体がたまるもの。閉経後に多く、大きくなりやすい。

・皮様性嚢腫(ひようせいのうしゅ)

毛髪・皮膚・歯などの組織がかたまりになって溜まるもの。20~30代に好発する。

・チョコレート嚢腫(子宮内膜症性卵巣嚢腫)

子宮内膜症が卵巣にも発生した結果、月経時の出血や子宮内膜組織が卵巣内にたまったままになってチョコレート様になったもの。20~40代に多くみられる。40代以上ではがん化のリスクがあり、チョコレート嚢腫の手術症例の約4%にがん化がみられたと報告されている。10cm以上の大きさのものはとくにリスクが高くなる。


原因

チョコレート嚢腫は子宮内膜症が原因ですが、ほかのタイプの原因については、まだはっきりとはわかっていません。

症状

卵巣嚢腫は無症状のまま経過し、婦人科検診や妊娠時の検査で偶然見つかるケースが多くみられます。しかし嚢腫が大きくなると、腫瘤を手で触れて気がついたり、下腹部痛や腹部の張り(膨満感)、頻尿などの症状が現れたりします。

また、大きさが6cm以上になると、卵巣の根元がねじれる「茎捻転」を起こしやすくなります。茎捻転を起こすと、突然、下腹部の激痛、嘔吐などが起こり、ショック状態に陥ることもあるため、緊急搬送が必要になります。

チョコレート嚢腫の場合は嚢腫の破裂を起こすことがあり、この場合も同じような強い症状が突然現れ、緊急手術が必要になります。


卵巣嚢腫
卵巣嚢腫

検査・診断

問診、内診と経腟超音波検査で診断します。超音波検査で嚢腫の大きさ、形状、良性・悪性の鑑別をつけ、必要な場合には尿検査、血液検査、CTやMRIが行われます。

診断では、機能性嚢胞(月経周期にあわせて増大し、自然消失するもの。多くは1.5cm未満)、悪性腫瘍(卵巣がんなど)などとの鑑別が重要になります。


治療

嚢腫が良性で、大きさが6cm未満であれば、月経周期を考慮しながら、3~6カ月に1度程度の定期的なチェックで経過観察します。現時点ではチョコレート嚢腫以外の嚢腫を縮小・消失させる薬物はないことから、良性でも大きさが6cm以上のものは、茎捻転を避けるために手術を考慮します。

一方、チョコレート嚢腫に対しては、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)で痛みや炎症を抑えながら、子宮内膜症病変の縮小を目的に、低用量ピル、プロゲスチン製剤、GnRHアナログ製剤などを用いてホルモン療法を行います。薬物療法で効果がみられない場合や、嚢腫が大きい場合などには、手術が行われます。

卵巣嚢腫の手術は腹腔鏡が主流で、大きさや嚢腫の状態などにもよりますが、妊娠を望む場合には正常な卵巣組織を残す「嚢胞摘出術」が適応されます。嚢腫が大きく、卵管、子宮、膀胱、尿管など、周囲の臓器と癒着を起こしている場合には、卵巣と卵管を切除する「付属器摘出術」が行われます。悪性の疑いがある場合には開腹手術を行うこともあります。

いずれにしても、妊娠・出産を望む場合には、慎重に治療法を選択することになります。


セルフケア

予防

卵巣嚢腫は原因がわかっていないことから、予防はむずかしいと考えられます。

しかし、チョコレート嚢腫に関しては、子宮内膜症の発見・改善がセルフケアとなります。子宮内膜症を疑う症状(重い月経痛、月経困難症、腰痛、性交痛など)があれば、「生理痛がひどいだけ」と考えずに、婦人科の診察を受け、子宮内膜症を指摘されたら、適切な治療を受けるようにしましょう。


監修

Raffles Medical Clinic Hanoi 婦人科

秋野なな

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