卵巣炎
らんそうえん

最終編集日:2023/8/28

概要

卵巣炎は、卵巣に細菌などの微生物が侵入して炎症を起こす病気です。卵巣に炎症が起こると、多くは卵管にも炎症が起こり、卵管炎を併発します。卵巣と卵管をあわせて「子宮付属器」ということから、この病気も「子宮付属器炎」と呼ぶこともあります。また、子宮付属器が骨盤内にあることから「骨盤内炎症性疾患」に分類されています。

慢性化すると不妊異所性妊娠などにつながるリスクがあるため、早期の治療が必要です。

原因

卵巣に感染を起こす原因菌として、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、クラミジア、淋菌などが挙げられます。腟から子宮頸管、子宮体部、卵管、卵巣と上行感染(からだの深部に向かって感染が広がる)を起こします。感染は性行為によるものが多いとされています。

そのほか、出産後や流産、人工妊娠中絶に伴って発症しやすく、理由として体力低下や不十分な処置などが考えられます。また、思春期以降に流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)にかかると、約5%に卵巣炎の合併がみられるといわれています。

卵巣炎
卵巣炎

症状

急性期には、発熱、悪寒、嘔吐、炎症を起こした卵巣のある場所(左右どちらかの下腹部)の疼痛・圧痛(押すと痛む)などが現れます。おりものが増え、うみ状になることもあります。しかし、これらの症状がすべてそろうケースはまれで、炎症が起きていることに気づかない場合もあります。

慢性化すると、激しい症状は治まりますが、下腹部の鈍痛、腰痛、排尿・排便時痛、月経痛などが持続します。

検査・診断

内診、血液検査、子宮頸管からの分泌物による細胞検査を行い、原因菌を特定します。超音波(エコー)検査、MRI検査やCT検査などの画像診断で、卵巣、卵管、子宮の様子を調べます。

急性期で痛みが強く、内診ができない場合には、画像診断が中心になります。また、原因菌の特定には時間がかかるため、治療が先行して行われます。

治療

抗菌薬による治療が基本です。

炎症を起こした卵巣や卵管にうみがたまっている場合は抗菌薬が効きにくいため、経腟超音波ガイド下で穿刺する(針を刺す)などの方法でドレナージ(排液・排膿)を行います。また、直腸などの周辺臓器への癒着を起こしている場合には、手術による癒着の改善や、重症例では卵巣の摘出が考慮されます。

セルフケア

予防

卵巣への細菌感染を防ぐために、月経時には生理用品をこまめに取り換え、清潔を保ちましょう。

クラミジアや淋菌は、性行為によって感染します。コンドームを使用する、感染した場合はパートナーもきちんと治療するなどを実践します。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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