肺化膿症/肺膿瘍はいかのうしょう はいのうよう
最終編集日:2025/2/10
概要
細菌などに感染したことで肺の組織が壊死し、その部分が空洞になって内部にうみや微生物などがたまる病気です。肺炎の重症型といえます。
肺に基礎疾患がなく免疫機能が十分に働いていれば、肺が細菌に感染しても肺炎を起こす程度ですが、体力や免疫力が低下していると、肺化膿症に進展してしまいます。
肺に基礎疾患がある人では、肺の組織が壊れている部分の免疫機能が低下しています。さらに、免疫機能が低下することの多い糖尿病などの持病のある人、誤嚥性肺炎を起こしやすい人(高齢者やアルコール依存症の人)、免疫抑制剤などを用いている人はリスクが高いとされています。
原因
何らかの原因で、肺が細菌感染を起こすことで肺化膿症がひきおこされます。最も頻度が高いものとして、口腔内の細菌が誤って気管支や肺に入り込む誤嚥性肺炎が挙げられます。
また、肝膿瘍や敗血症、菌血症など、呼吸器以外の病気が原因になることもあります。この場合は、ほかの臓器に生じた感染症の原因となった細菌が血液を介して肺に流れ込んで、肺化膿症が起きます。
症状
発熱、寝汗、せき・たん、倦怠感、体重減少、胸痛などが現れます。たんは膿性でいやなにおいがすることが多く(酸素不足の状態で増殖する嫌気性感染と推定されます)、しばしば血痰となります。
高齢者では強い症状が現れにくく、倦怠感や体重減少のみで、発症に気づきにくいこともあります。
検査・診断
肺化膿症が疑われたら、血液検査、胸部X線検査、胸部CTなどの画像検査が行われます。
治療
口腔内の細菌に有効な抗菌薬を用いて治療します。治療は1カ月~数カ月かかり、一般的な肺炎にくらべて治りにくいといえるでしょう。
肺化膿症が進むと、肺の周りの胸腔に浸出液(組織や細胞からしみ出した液体)やうみがたまる「膿胸」という状態になります。膿胸をひきおこすと、うみを排出する胸腔ドレーンという管を留置したり、手術によってうみを排除する治療が行われます。
セルフケア
予防
肺化膿症を防ぐには、虫歯や歯周病の治療をきちんと行い、日頃から口腔ケアに努めることが肝要です。
そして、上記のような症状が現れたら、内科や呼吸器内科を受診して検査および早めの適切な治療を受けましょう。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽 浩一郎