膿胸のうきょう
最終編集日:2022/3/3
概要
膿胸は、肺の外側の胸腔と呼ばれる空間に炎症が生じ、膿性の液体(うみ)がたまる疾患です。肺炎や肺膿瘍などの呼吸器疾患にかかった後や、食道や肺などの外科手術をした際に合併症として発症しやすくなります。
おもな症状は発熱、胸痛、せき、呼吸困難などで、重症になると血液を介して細菌が体中に広がり(敗血症)、全身の状態が悪化します。現在は抗菌薬(抗生物質)の進歩によって、膿胸の発症頻度は減少していますが、免疫機能の低下によって細菌感染しやすいうえ、誤嚥により口腔内の細菌が肺に入り込むことがあるため、高齢者はとくに注意が必要です。
慢性化すると治療がむずかしくなるため、早期に治療を行うことが重要です。
原因
膿胸は、肺炎や肺膿瘍が胸膜に広がり、細菌が胸腔内に侵入して発症することが多く、原因となる細菌は黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、ストレプトコッカスミレリ、嫌気性菌などさまざまです。
肺炎や縦隔炎などの感染症に続発して発症することもあり、とくに高齢の寝たきりの人や、糖尿病、腎不全、低栄養状態、免疫抑制剤の使用などで免疫機能が低下している人が発症すると、感染が広がってしまうことがあります。
肺や食道など周辺部位の外科手術後に発症することもあります。まれに上部消化管内視鏡検査で食道が破れてしまったり、義歯などのとがった異物を誤嚥したり、外傷を負ったりしたことがきっかけで膿胸を起こすこともあります。
症状
膿胸はうみが蓄積してから3カ月以内のものを急性膿胸、それより経過したものを慢性膿胸と呼び、それぞれで症状が異なります。
急性膿胸の症状としては、発熱、胸痛などがあげられます。膿性痰という、うみのような「たん」が出たり、うみがたくさんたまって呼吸困難をひき起こすこともあります。一方、慢性膿胸は結核性のことが多く、長期にわたって無症状のこともあります。ただし胸腔内にフィブリンと呼ばれる硬い物質が蓄積されるようになるため、フィブリンが大量に胸腔内にたまると呼吸困難が起こります。
慢性膿胸になると治療がむずかしくなるため、急性期の段階で治療を行うことが重要とされています
検査・診断
膿胸の検査ではさまざまな角度から胸腔の状態を確認します。
まず血液検査により炎症の程度や血液中の細菌の有無を確認します。
つづいて胸部X線検査や胸部CT検査を行い、液体成分の蓄積や胸膜の厚さなどから、うみのたまり具合を確認します。
診断では、細菌検査として胸腔に針を刺してうみを採取する胸腔穿刺を行い、好中球の増加や原因となっている病原体について顕微鏡で調べます。しかし細菌検査では病原体がわからないことも多いため、その場合には培養検査を行って原因菌を確定します。
治療
急性膿胸では、適正な抗菌薬(抗生物質)の投与とともに胸腔内の膿性胸水の排出を行い、多くは3週間程度で治癒します。
胸腔にたまっているうみを排出する治療では、胸腔に胸腔内ドレナージといわれるチューブを挿入します。
胸腔内を生理食塩水で洗浄したり、アミノグリコシドなどの抗菌薬を注入したりすることもあります。
慢性膿胸では、胸腔内にフィブリンが形成されてしまうことで、肺が潰れてしまっている場合が多く、手術が必要となります。多くの場合、膿胸を起こしている空間を閉鎖するため、胸膜肺切除術、開窓術、肺剥皮術、膿胸腔掻爬術、胸郭形成術などを行います。
セルフケア
病後
治療が無事に終了すれば、一般的には予後は良好です。
予防
膿胸でもっとも大切なことは、早期に治療を開始することです。深呼吸やせきをしたときに胸が痛み、発熱もある場合は、早めに医療機関を受診するようにします。とくに高齢で寝たきりの人が発熱や胸痛を訴えた場合は、家族がかかりつけ医などに相談するようにしましょう。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎
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