塵肺じんぱい
最終編集日:2022/1/11
概要
アスベストやケイ酸など、鉱物性の無機粉塵を長年にわたって大量に吸い込むことで、肺に粉塵が沈着して起こる病気です。粉塵に曝露された方すべてに起こるわけではありません。おそらく何らかの遺伝的素因をもっている方が塵肺になります。また理由はわかっていませんが、肺に沈着した粉塵が肺の外側の胸膜まで到達することが多いのが実際です。
無機粉塵は体内で処理することができないので粒子のまま肺内に残り、肺組織を傷つけます。長期間にわたって粉塵の吸引がつづくと肺が線維化して、肺そのものが硬くなり十分にふくらまなくなってしまいます。それによって呼吸困難や息切れ、たん、せきなどをひきおこします。
原因
鉱山での労働や石材加工業、建物解体業、製紙業をはじめ、粉塵を頻繁に体内に吸入するような環境で何年も働きつづけることが原因です。
作業中は気がつかなくても、何年もかけて症状はゆっくりと進行します。また、いったん生じると、現場での粉塵作業をやめても正常の肺には戻りません。
症状
初期には自覚症状はほとんどありませんが、息切れ、たん、せきなどの症状が増え始めます。また進行すると、呼吸困難をひきおこします。
慢性気管支炎、肺がん、肺結核、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気胸などの合併症が生じることも多いので注意が必要です。
検査・診断
粉塵を吸入してきた長さや職業歴を聞き取る問診、聴診、胸部X線検査、胸部CT検査、呼吸機能検査などを行います。
塵肺の認定には呼吸機能検査が必要になります。ただし喫煙による呼吸機能悪化もあります。
治療
現在、根本的な治療方法はなく、肺の線維化の進行を止める方法も解明されていません。そのため症状を緩和させる治療が中心になります。せきには鎮咳剤、たんには去痰剤、呼吸困難には酸素療法や呼吸リハビリテーションなど、症状に応じた治療が行われます。
合併症を生じている場合は、その治療も並行して行います。
セルフケア
療養中
塵肺の合併症を予防するためにも、適切な健康管理は必要です。禁煙することはもちろん、バランスのとれた食生活を心がけ、適度な運動を日常生活に取り入れながら、規則正しい生活を送りましょう。
予防
一度、発症すると進行しつづける病気のため、予防することはきわめて重要です。職場における粉塵を十分に抑えるための発生源対策、換気装置の活用、粉塵マスクの着用などが有効になります。
早期発見が大切なので、粉塵の現場作業に携わる人は、1年に1回、胸部X線検査を受けることが必要です。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科特任教授
巽浩一郎
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