漏斗胸(胸郭変形)
ろうときょう・きょうかくへんけい

最終編集日:2023/10/24

概要

漏斗胸は胸郭変形の一種で、みぞおちの辺りが陥凹(かんおう)している状態を指します。先天的な変形で、出生時からへこみのある場合や、成長に伴ってへこみが現れてくるケースなど、さまざまです。発症頻度は0.1%程度で、男女比は約3対1とされています。

原因

肋骨は背骨からからだのわきを通って、胸の中央に縦に位置する胸骨までをつないでいます。胸の前面にくると肋骨は「肋軟骨」という軟骨に入れ替わっています。漏斗胸では、肋軟骨の成長が速すぎるために、通常よりも長くなってしまい、内側に陥凹をひきおこすと考えられています。しかし、このような変形がなぜ起こるかはわかっていません。遺伝的な要因が指摘されていて、遺伝的な疾患のマルファン症候群(マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群)などに合併することもあります。

症状

多くは無症状ですが、肺活量の低さや心電図異常などを健康診断で指摘されることもあります。また、胸板が薄くやせている、猫背など、姿勢の特徴がみられます。脊柱側彎症(背骨が横に曲がっている)を伴うこともあります。

変形が重度になると胸痛、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などが現れます。また審美的な観点からの悩みを抱く場合が多くみられます。

検査・診断

視診、胸部X線検査、胸部CT検査などで診断がつけられます。CT画像から、重症度や治療適応の判断の目安とされる「ハラー指数」が計算されます。

ほかの遺伝性の病気などを合併していないかを鑑別する必要があります。

治療

治療には手術と、保存療法があります。


●手術

ハラー指数が3.25を超える、漏斗胸が原因で心肺機能が低下している、あるいは患者さん本人が漏斗胸を気にしているなどの場合には、手術を考慮します。手術は「胸骨挙上術」「Nuss(ナス)手術」などがあります。胸骨挙上術は皮膚を切開して行う形成手術です。Nuss手術は内視鏡下で、陥凹部分にチタン製のバーを挿入して、へこんだ部分をもち上げる方法です。バーは2~3年後に抜去します。形成手術にくらべてからだへの侵襲が小さいため、最近では主流になりつつあります。漏斗胸の手術は10歳くらいまでに行うと治療効果が高いといわれています。成人の場合は、胸骨挙上術が選択されます。


●保存療法

運動や姿勢の改善によって、肺活量の改善などが期待できます。また、胸部に大きな吸盤を密着させて、胸壁をもち上げる「陰圧吸引療法」が行われることもあります。陰圧吸引療法は数年間つづける必要があります。保存療法は成人の漏斗胸にはすすめられません。

セルフケア

療養中

●受診について


漏斗胸は形成外科、外科、小児外科などを受診しますが、大学病院や総合病院では「漏斗胸外来」「漏斗胸センター」などを設けているところもあります。


監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽浩一郎

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