肺真菌症はいしんきんしょう
最終編集日:2023/3/15
概要
真菌(カビ)を吸い込むことで起こる感染症を肺真菌症と呼びます。真菌は空気中に存在していて、健康な人では吸い込んでも肺真菌症を発症することはまれです。しかし、もともと肺や気管支の病気があり、気道粘膜に損傷があるために気道の免疫力が低下している人、ステロイドの服用や血液疾患、悪性腫瘍などで免疫が抑制されている人では発症しやすくなります。また近年、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、重症インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などにも合併する症例が増加しているといいます。
なお、真菌による病気として水虫がよく知られていますが、感染場所が体表であるため「表在性真菌症」と呼ばれています。一方、真菌が肺、脳、肝臓、腎臓などに感染したものを「深在性真菌症」と呼びます。肺真菌症は深在性真菌症のひとつです。
原因
真菌のなかで、アスペルギルス属、クリプトコックス属、ムーコル属、カンジダ属が原因となるものが多くみられます。一番多いのはアスペルギルスによる感染症です。
症状
発熱、せき、たん、血痰などが現れます。
肺クリプトコックス症では、患者さんの免疫状態によって無症状なものや、呼吸困難などの強い症状がみられるものがあります。クリプトコックス脳髄膜炎を合併するケースも多く、その場合は頭痛、けいれん、意識障害などを伴います。肺アスペルギルス症や肺ムーコル症では、発熱や呼吸困難が急速に進展するケースもあります。
検査・診断
既往症、投薬中の薬剤、問診、症状から肺真菌症が疑われたら、胸部X線、CTなどの画像診断で肺の状態をみます。並行して、喀痰や肺胞洗浄液などの呼吸器検体を採取し、真菌の同定検査を行います。
また、採血して血清抗原検査を行うこともあります。この検査は肺クリプトコックス症では有用ですが、ほかの肺真菌症では確定診断につながらない場合もあります。
治療
基本となるのは、抗真菌薬の投与です。感染した真菌の種類によって、薬剤や投与期間などが異なります。真菌感染が肺の一部分に限局している場合には、その部分を切除する手術が考慮されることもあります。
肺アスペルギルス症のひとつである「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症」では、ぜんそく治療に準じた治療が行われ、ステロイドの内服も併用します。治療の効果が十分でない場合に抗真菌薬を用います。
セルフケア
病後
肺真菌症は、肺の病気がない人には起こりません。すなわち、もともとある肺の病気を悪くしないことが肝要です。そのためには、肺の病気の主治医と相談し、肺や気管支の病気の適切な治療をつづけましょう。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎
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