食欲の異常

最終編集日:2024/1/19

概要

食欲は、内臓の状態やホルモンの働き、心理的な要因など、さまざまな原因によって亢進したり減退したりします。食欲に変化をもたらす原因には次のようなものがあります。


●急激な食欲減退

急に食欲がなくなり、みぞおちや腹部に痛みが現れた場合は、急性胃腸炎や食中毒、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など胃腸疾患の可能性があります。コールタールのような排便がある場合は、胃や十二指腸から出血している恐れがあり、医療機関受診が必要です。


●慢性疾患による食欲減退

慢性胃炎や慢性肝炎、結核、がんなどの疾患では食欲減退がつづき、徐々に体重が落ちてくることがあります。食欲減退とともに倦怠感や黄疸(おうだん)の症状がある場合には、慢性肝炎など肝臓に異常がある恐れがあります。


●慢性疾患による食欲亢進

糖尿病や甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)を発症すると、異常な食欲が症状として現れます。糖尿病の場合には、食欲亢進とともにのどの渇きを訴えるのが特徴です。甲状腺中毒症の場合は、頻脈や動悸、手足のふるえなどの症状が現れます。


●体重が増える食欲減退

甲状腺機能低下症や尿毒症、心不全などの疾患では、食欲が減退しているにもかかわらず体重が増加していきます。食欲減退と同時に、からだのだるさやむくみの症状が現れます。


●精神的な疾患による食欲減退・食欲亢進

うつ病を発症すると、気分が落ち込んで何を食べてもおいしくないと感じるようになるため、食欲が減退します。また、拒食症や過食症などの摂食障害では、適切な量の食事をとることができなくなります。拒食症の場合は、体重の増加を拒絶する心理から食事をとらなくなり、体重減少とともに無月経などの症状が現れます。過食症の場合は、高カロリーのものを大量に食べては嘔吐するようなことをくり返します。どちらも太ることを嫌悪する若い女性に多くみられる疾患です。


●認知症による食欲亢進

認知症になると、直近の出来事を忘れてしまう記憶障害の症状が現れるため、食事をしたことを忘れて何度も食べようとするケースが多くあります。本人には空腹かそうでないかの判断もむずかしくなっているため、周囲の人が食事管理を行う必要があります。


●薬剤の服用による食欲減退・食欲亢進

鎮痛剤などの薬剤には、食欲減退をひきおこす成分が含まれているものがあります。また、胃薬などには食欲を増進させる働きのあるものが多くあります。

受診の目安

救急車を呼ぶ・ただちに医療機関を受診

・脱水症状を起こしている

・胃や腸に激しい痛みがある

医療機関を受診

・コールタールのような排便がある

・異常なのどの渇きがある

・動悸がつづいている

・頻脈になっている

・手足がふるえる

・むくみがある

・月経が止まった

・急激に痩せた

様子をみる

・かぜをひいている

・ひどく疲れている

・睡眠不足である

・前日に暴飲暴食をした

・鎮痛剤や胃薬などを服用している

セルフケア

一次的な食欲減退のケースとして、かぜなどの疾患や過労、睡眠不足、暴飲暴食の翌日などの食欲減退は誰もが経験することです。少量の胃腸に優しい食事と十分な休息で自然に回復します。


食欲はさまざまな状況によって影響を受けるものの、いつもと違う食欲の亢進や減退がみられる場合には、医療機関への受診をおすすめします。

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監修

宮川病院 内科部長

宮川めぐみ

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