ウイルス性胃腸炎
ういるすせいいちょうえん

最終編集日:2022/3/14

概要

ウイルスに感染することで発症する胃腸炎のことです。原因ウイルスは、ノロウイルスロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、コロナウイルスなどさまざまです。

ウイルス性胃腸炎は秋から冬に流行する傾向にあります。なかでもノロウイルスは、感染力が強く、年齢に関係なくだれもが感染します。ウイルスに感染した人が身近にいるといつの間にか感染が広がることがあるので、注意が必要です。


原因

胃腸炎をひき起こすウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあり、これらのウイルスに感染している人の吐しゃ物や便、唾液などが原因となるほか、ウイルスに汚染された食品や水なども感染源となります。カキやアサリなどの二枚貝を、加熱不十分な状態で食べることでノロウイルスに感染することが知られています。

おもな感染経路は、ウイルスが付着した物や人に触れることで感染する接触感染です。接触感染には、ウイルス性胃腸炎を発症した子どもと遊んでいるうちに感染してしまう直接接触感染と、ウイルス性胃腸炎に感染している人と直接触れ合っていないのにその人が使ったタオルやコップなどから間接的に感染してしまう間接接触感染があります。

感染した人の吐しゃ物や便の中には大量のウイルスが含まれていますが、そこからウイルスが空気中に拡散されることで感染する空気感染もあります。


症状

ウイルス性胃腸炎の症状は、感染したウイルスによっても異なりますが、一般には、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、発熱などです。


●ノロウイルスの場合

感染してから発症するまでの期間は1~2日程度です。急な嘔吐から始まるケースが多く、発熱はあったとしても軽度です。子どもから大人までだれでも感染し、症状は3~4日で治まります。主な症状は嘔吐と水分の多い下痢で、1日に10回以上みられることもめずらしくないため、脱水状態にならないようにこまめな水分補給を行うなど、注意が必要です。


●ロタウイルスの場合

乳幼児、とくに生後6カ月~2歳までに多くみられます。潜伏期間は2~4日。発熱した後に下痢などの症状が現れることも少なくありません。米のとぎ汁のような白い色の下痢が1週間程度続きます。便が酸っぱい匂いがするという特徴もあります。まれに脳炎や脳症、腎不全、腸重積などの合併症を起こすこともあるので注意が必要です。乳児は予防のためにワクチンを接種することができます。


検査・診断

問診では症状などをくわしく聞き取ります。下痢の回数と量、その状態、嘔吐の回数、尿は出ているか、水分はとれているかなどについて聞かれることが多いため、あらかじめメモしておくといよいでしょう。

感染力が強く毎年流行しているウイルスもあるため、周囲で同じような症状の胃腸炎が流行していないか、身近にウイルス性胃腸炎を発症している人がいないかどうかなどを確認します。

便検査で感染ウイルスを特定することができる場合もありますが、たとえ特定しても治療法は変わらないため、問診で聞き取った症状から判断することがほとんどです。身体観察で脱水が疑われるような場合には、血液検査を行うこともあります。


治療

ウイルス性胃腸炎の治療は、抗ウイルス薬がないため、吐き気止めや整腸剤などを使いながら経過をみる対症療法が基本です。下痢止めは、症状を悪化させてしまう可能性があるため処方しません。

一般には、水分補給をしながら安静に過ごして症状が落ち着くのを待ちます。ひどい下痢や嘔吐によってからだの水分が失われ、脱水状態となっている場合には、点滴で水分を補給することもあります。


セルフケア

療養中

こまめな水分補給をして脱水状態にならないようにします。ただし嘔吐直後は、口をゆすぐ程度にして1~2時間は胃腸を休めましょう。その後、ティースプーン1杯程度のごく少量から水分をとるようにします。

二次感染を防ぐことも大切です。家族がウイルス性胃腸炎にかかった場合には、トイレなどでタオルを共有するのは避け、ペーパータオルなど使い捨てのものを使用しましょう。吐しゃ物や便のついたオムツなどの処理の際には使い捨てのビニール手袋やマスク、エプロンなどを使います。部屋の換気はもちろん、トイレに窓がある場合には、トイレの換気も心がけてください。


予防

基本的な予防方法は手洗いを徹底することです。せっけんで手を洗い、流水で30秒以上しっかりと洗い流しましょう。ドアノブなどの消毒も必要です。ノロウイルスやロタウイルスの場合、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)による消毒が有効です。



監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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