慢性胃炎
まんせいいえん

最終編集日:2022/3/26

概要

胃の粘膜が炎症を起こしている状態を胃炎といい、慢性胃炎と急性胃炎に分けられます。

慢性胃炎は胃粘膜の炎症が長期間つづいている状態で、多くはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染によるものと考えられます。

ピロリ菌の感染時期は幼少期で、胃酸に耐性があるピロリ菌は、何十年も胃のなかで生きつづけて胃の粘膜を攻撃し、炎症を広げていきます。胃がんの主要原因にもなるため、ピロリ菌の除菌は胃がんの予防にもつながります。


原因

慢性胃炎のおもな発症原因はピロリ菌感染であることが近年の研究でわかってきました。

国内外の調査によると、ピロリ菌感染の主な原因は、乳幼児期の家族内感染あるいは井戸水の摂取で、それ以降の感染は少ないことがわかっています。

ピロリ菌以外の原因には、ストレス、食べすぎや飲みすぎ、喫煙、薬の副作用などが挙げられます。アルコールやコーヒーなどの嗜好品、唐辛子やにんにくなどの香辛料、熱すぎる飲食物など、刺激が強い食品も胃に負担をかけるためリスクが高いとされています。塩分のとりすぎも慢性胃炎をひき起こす要因となります。

最近では自己免疫機序による自己免疫性胃炎も注目されています。


症状

慢性胃炎特有の症状はありません。

おもな症状としては、胃痛、胃のむかつき、胃もたれ、胃が重いような不快感、吐き気、嘔吐、食欲不振などが挙げられ、こうした症状の多くは空腹時や食後に現れます。吐血や下血の症状がみられることもあります。

自覚症状がなく進行するケースもあります。



検査・診断

内視鏡検査で胃粘膜の炎症の程度を観察するとともに、ピロリ菌感染の有無について調べます。必要に応じて、胃粘膜の組織の一部を採取して顕微鏡で観察診断する生検を行うこともあります。

治療

慢性胃炎には無症状のケースが多く、その場合はとくに治療は行わずに経過観察を行います。

何らかの自覚症状がある場合には、まずその症状を改善するための薬物療法(薬による治療)を行います。胃粘膜を保護する薬や胃酸を抑える薬、胃の運動を調節する薬のほか、ストレスが原因と考えられる場合には抗不安薬、抗うつ薬などが処方されます。

検査によりピロリ菌に感染していることがわかった場合には除菌治療を行います。具体的には抗菌薬と胃酸の分泌を抑える薬を1週間服用します。服用から6週間後以降に検査を行い、除菌に成功したかどうかを判定します。ピロリ菌の除菌治療は、慢性胃炎の場合でも保険適用となっています。



セルフケア

予防

ピロリ菌に感染して発症した慢性胃炎は、胃がんのおもな原因になります。ピロリ菌を除菌することは、胃がんの発症リスクを低下させることにつながります。

ピロリ菌検査の結果が陽性だった場合には除菌治療を受けましょう。ただし、1度でもピロリ菌に感染したことがある場合は、除菌したからといって胃がんのリスクはゼロにはなりません。1年に1回は胃カメラ検査を受けるようにしましょう。

慢性胃炎の改善、予防には、生活習慣を見直し、生活リズムを整えることも大切です。酒の飲みすぎや喫煙、刺激の強い香辛料、コーヒーなどカフェインを含む飲み物は控えましょう。

精神的ストレスも胃炎をひき起こす原因となります。なるべくストレスをためないように心がけ、自分なりのストレス解消法を見つけておくことも大切です。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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