胃潰瘍
いかいよう

最終編集日:2022/3/26

概要

胃潰瘍は、胃の粘膜にただれや炎症が起き、胃液がその粘膜を溶かしてしまう病気です。潰瘍は胃粘膜の深いところまで及び、症状が進むと胃に穴が開いてしまうこともあります。

以前はストレスなどが原因で発症すると考えられていましたが、最近ではヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が原因の多くを占めるということがわかっています。治癒と再発をくり返す胃潰瘍も多く、その背景には、ピロリ菌感染があるとされています。


原因

胃は強い酸と消化酵素を含んだ胃液を分泌して食べた物を消化しますが、この胃液から胃を守るために粘液を分泌して、胃粘膜の表面を覆っています。この胃液と粘液の両者のバランスが崩れると胃酸が胃の粘膜を傷つけ、潰瘍ができてしまいます。

胃液と粘液のバランスを崩し、胃潰瘍を起こす原因でもっとも多いのがピロリ菌感染です。つづいて、非ステロイド抗炎症薬や副腎皮質ステロイド薬の長期間使用も原因のひとつです。これは、非ステロイド抗炎症薬や副腎皮質ステロイド薬の作用によって、胃粘膜を保護する物質の働きが抑えられてしまうため、胃に炎症が起こりやすくなるからです。非ステロイド抗炎症薬のなかでもアセトアミノフェンは胃腸障害が少ないといわれています。

また、塩分のとりすぎ、過度の飲酒や喫煙習慣、精神的ストレスなども胃潰瘍を発症するきっかけとなります。


症状

通常、みぞおちの辺りに痛みが現れます。痛みの程度はさまざまで、痛みが現れるのは食事中、または食後がほとんどです。ほかの症状としては、胃の圧迫感、膨満感、胸やけ、吐き気、胃酸が上がってくるような酸っぱいげっぷなどがあります。

症状が進むと潰瘍部分から出血して吐血をしたり、真っ黒なタール状の便が出たりします。強い腹痛や冷や汗、血圧の低下、貧血などの症状を伴うこともあります。

さらに進行して悪化すると胃に穴が開いてしまうこともあり、その場合、腹膜炎を起こして激しい腹痛が現れます。


検査・診断

問診で症状を聞き取ります。その際に非ステロイド抗炎症薬や副腎皮質ステロイドを使用していないかどうかについても確認します。胃潰瘍の検査には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、バリウムを飲んで行うX線造影検査などがあります。潰瘍があるかどうかは、内視鏡検査をすることで確定でき、胃の粘膜の状態などから病気がどの程度進んでいるかを診断します。

胃潰瘍があることがわかったらピロリ菌の有無を調べます。

また、胃がんの場合も潰瘍ができるため、胃がんとの鑑別のために、組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる生検を同時に行います。


治療

内視鏡検査で潰瘍から出血しているのが見つかった場合には、検査時に止血クリップなどで止血します。近年では、血が止まらない場合や胃に穴が開いた場合以外には、潰瘍で手術することはほとんどありません。

出血もなく、胃がんも見つからなかった場合は、胃酸の分泌を抑える薬を使った治療を行うのが一般的です。検査でピロリ菌が確認されたときは除菌治療を行います。

そのほか、食生活の乱れや喫煙習慣、過度の飲酒などが発症のきっかけとなっていることがあるため、治療に加えて、食事を中心とした生活指導が行われる場合もあります。


セルフケア

療養中

まずは、安静にすることが大事です。軽症の胃潰瘍は、薬を飲まなくても痛みは1〜2週間で治まり、多くは2カ月程度で自然に治ります。

ただし、再発をくり返すケースも少なくないため、薬が処方されたら自己判断で薬の服用をやめたりしないことが大切です。医師の指示に従い、薬はきちんと服用してください。

食事は消化のよいものを少量ずつ、数回に分けて食べるようにしましょう。ストレスをためない生活を心がけることも大事です。睡眠は十分にとるようにし、生活リズムを整えます。喫煙や飲酒習慣も見直したいポイントです。刺激が強い食べ物はできるだけ避けるようにしましょう。


予防

胃潰瘍の原因の多くはピロリ菌感染です。そのため、ピロリ菌を除菌することが予防につながります。健康診断などでピロリ菌が見つかった場合には、きちんと除菌治療を受けるようにしましょう。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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