心不全しんふぜん
最終編集日:2025/12/26
概要
心臓は、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心不全とは固有の病名ではなく、このポンプ機能がさまざまな心疾患や高血圧などによりうまく働かなくなった結果、息切れやむくみといった症状が現れて、徐々に悪くなり、最終的には命を縮める病態をいいます。その原因には心筋梗塞や高血圧、弁膜症などがあります。心不全は、緊急かつ迅速な対応が必要な急性心不全と、ある程度状態の落ち着いた慢性心不全に分類されますが、必ずしも明確に区別されるものではありません。また、心不全の現れ方によって、右心不全(うしんふぜん)と、左心不全(さしんふぜん)に分けられます。
原因
心不全を起こす心疾患は、その多くが生活習慣病から始まっています。心臓の筋肉に栄養を供給するための血管(冠動脈)が詰まってしまう心筋梗塞、狭心症、塩分のとりすぎで起こる高血圧症などの生活習慣病のほか、弁膜症、心筋自体に障害が生じる心筋症、不整脈や先天的な心臓病など、さまざまな疾患が心不全の原因となります。
●右心不全
右室心筋梗塞、肺塞栓症、肺性心などにより、右室のポンプ機能が低下します。右心不全では、下肢や肝臓に浮腫(むくみ)が生じます。
●左心不全
高血圧性心疾患や虚血性心疾患などによって左室のポンプ機能が低下すると、大動脈に十分な血液を送り出せなくなります。その結果、左房が拡大化・肥大化して、肺静脈がうっ血(血液が滞る)し、呼吸困難、呼吸が苦しくて横になって眠れない起坐呼吸の状態になります。

症状
心不全になると、ポンプ機能の低下により心臓から十分な血液を送り出せなくなります。血流の滞りによる息切れや呼吸困難、動悸のほか、からだに必要な酸素や栄養が不足してしまうことで、疲れやすさといった症状が現れます。近年、このポンプ機能が低下していない心不全が多くあることがわかってきており、これは心臓が硬くなることで生じると考えられています。
また、腎臓に必要な量の血液が供給されなければ尿が正常につくられなくなり、からだにむくみが生じます。こうした息切れやむくみは、心不全の初期に多い症状です。
最近では、症状が出る前に早期発見し、予防することが重要とされています。このため、心不全は病気の経過に応じてステージ分類がされています。
・ステージA:高血圧や糖尿病、腎臓病など、心不全のリスクがある段階
・ステージB:ポンプ機能が低下しているなど構造的・機能的に異常があるが、症状がない状態
・ステージC:症状がある状態
早期発見し、症状のないステージAやBの状態から積極的に治療を行うことで、心不全の発症を防ぐ、または遅らせることができます。
検査・診断
息切れや呼吸困難、動悸といった心不全に特有の症状を問診で確認し、聴診、胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査などを行って総合的に判断します。
高齢者に多いとされる、収縮機能が保たれた心不全を診断する際は、心エコー検査が有効です。
また、血液検査によるBNP値の測定も診断に有効です。心臓に負担がかかったときに分泌されるホルモンの一種であるBNPは、高値であるほど心疾患の重症リスクが高いとされています。
治療
急性心不全は緊急性の高いケースが多く、救命のために集中治療室(ICU)や心臓集中治療室(CCU)で薬物療法(薬による治療)が行われます。
むくみ症状が強い場合にはうっ血を改善する利尿薬や血管拡張薬を用い、心筋の収縮力を強める強心薬を使って救命治療が行われます。
慢性心不全に対しては薬剤が処方され、おもに心機能の悪化と急性増悪を防止するための治療が行われます。心不全は根本治療がむずかしいものの、近年は薬物治療が進歩し、しっかりと薬を服用することで予後改善が期待できるものになっています。
セルフケア
療養中
心不全の治療を受けている場合は病状悪化を防ぐために4つのことを心がけましょう。
① 塩分摂取量を控える。
② かぜをひかないようにする。
③ ストレスをためない。
④ 処方された薬剤は途中でやめずに飲みつづける。
監修
神奈川県立循環器呼吸器病センター副院長 循環器内科
福井和樹