胆管炎たんかんえん
最終編集日:2023/10/18
概要
肝臓から十二指腸まで伸びる「胆管」に炎症が起こる病気です。胆管は、肝臓でつくられて胆嚢で一時貯留・濃縮された胆汁の通り道です。何らかの原因で胆管が閉塞し、胆汁がスムーズに流れずにうっ滞が生じると、胆汁中の細菌などに感染を起こし、胆管に炎症が発生します。死亡率は2.7~10%とされ、重症例は化膿性胆管炎といわれ、速やかな診断・治療が必要です。
原因
胆汁のうっ滞を起こす原因として、胆管結石、肝内結石、胆管狭窄、胆管がん、膵頭部がんなどが挙げられます。うっ滞が起こると、胆汁内の細菌が増殖することや、十二指腸から逆流した体液にのって腸内の細菌が入り込むことで、感染が起こります。
症状
みぞおちや右腹部の痛み、発熱、悪寒、黄疸(おうだん)、吐き気・嘔吐などが現れます。発熱・上腹部痛・黄疸の3つを「シャルコーの三徴」と呼びますが、腹痛が起こらないこともあり、シャルコーの三徴を現す頻度は50~70%とされています。
重症の場合は、循環障害や中枢神経障害、腎機能・肝機能障害など、さまざまな臓器に異常が現れ、意識障害が起こり、ショック状態に陥ることもあります。シャルコーの三徴に意識障害、ショック症状を伴うものを「レイノルズの五徴」と呼びます。
検査・診断
血液検査で炎症反応、白血球の増加、肝機能、肝臓・胆嚢系の酵素の上昇などを確認します。腹部超音波(エコー)検査や腹部CT検査、造影CT検査、MRI検査などの画像診断で、胆汁のうっ滞の状況、胆管の閉塞部位や拡張部位、結石の有無など、原因の精査を行います。
胆管炎では、感染の起因菌が早期に血液に入り、血液に菌が存在する「菌血症」の状態になります。さらに進行すると全身に感染が広がり、重篤な症状を現す「敗血症」に陥ります。胆管炎では敗血症に移行しやすいため、診断・治療は迅速に行われます。
また、胆管結石に胆管がんが合併することがあるため、鑑別診断が重要です。
治療
重症度にあわせて治療法が選択されます。
●軽症・中等症の場合
絶食・絶飲、輸液、抗菌薬を投与する「初期治療」を行います。初期治療で改善がみられない場合には、胆道(胆管)ドレナージを行います。胆道ドレナージは、たまった胆汁を排出して流れを取り戻し、胆道や胆嚢などの内圧を下げる治療です。ドレナージの方法はいくつかあり、皮膚と肝臓を経由して胆管にカテーテル(細い管)を通してチューブを留置し、体外に排出する「経皮経肝胆道ドレナージ」、内視鏡を用いてチューブやステントを留置する「内視鏡的胆管ドレナージ」などがあります。ステントと呼ばれる管を内視鏡で胆管に留置する場合は「ステント留置術」といいます。患者さんの全身状態や胆嚢、胆管、肝臓の状態を考慮して選択されます。ドレナージで排出された胆汁を培養して起因菌の特定も行います。胆管炎の症状が改善されたら、原因となった疾患の治療を行います。
●重症の場合
全身状態の改善を優先します。状態が落ち着いたら胆道ドレナージを行います。ショック状態にあると内視鏡の挿入がむずかしいこともあり、ドレナージ法は慎重に選択されます。
セルフケア
予防
胆石症があると胆管炎を起こすリスクが高くなります。健康診断やほかの病気の検査などで、胆嚢や胆管、肝臓内に結石があることを指摘されたら、消化器内科などを受診し、くわしく診てもらいましょう。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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