水痘すいとう
最終編集日:2022/3/12
概要
通称“水ぼうそう”と呼ばれ、水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスによって起こる感染力の強い病気です。空気感染や水疱(水ぶくれ)の内容物を触ることで接触感染します。
2〜3週間の潜伏期間の後、小さな赤い発疹ができて水ぶくれになり、全身に広がります。一度治ってもウイルスは体内に残り、抵抗力が下がったときに再活性化し、帯状疱疹をひき起こします。発疹出現の1~2日前から発疹出現当日までがもっとも感染力が強く、発疹出現後4~5日もしくはすべての水ぶくれがかさぶたになるまで感染力があります。
妊娠中に感染すると免疫力の低下により重症化しやすく、5%程度が肺炎を発症するといわれています。
原因
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって発症します。感染経路は、空気感染や水ぶくれの内容物を触ることによる接触感染です。
症状
38℃前後の発熱とともに赤い発疹が全身に広がり、その後かゆみを伴う水ぶくれに変わります。水ぶくれはうみを含んで大きくなった後、3~4日すると乾いたかさぶたへと変化して1週間程度で治ります。
妊娠中の妊娠初期13週頃までに初感染した場合は流産の危険性があり、13~20週で罹患した場合は先天性水痘症候群(Congenital varicella syndrome: CVS)のリスクがあります。CVSは発達遅滞を伴うさまざまな神経障害や奇形を伴うもので、1~2%程度の割合で発生します。また、妊娠14週~33週で水痘に罹患すると赤ちゃんが生後6カ月から1年までに帯状疱疹を発症する「新生児帯状疱疹」も2%程度でみられます。
出産直前に感染した場合は、母体からの移行免疫がない赤ちゃんが水痘に感染し、きわめて危険な状態になります。この場合は入院して高度な治療を受ける必要があります。
妊娠中の水痘感染は、慎重な対応が必要です。感染した場合はすぐに主治医に相談しましょう。
検査・診断
多くは、発疹、水ぶくれ、かゆみなどの特徴的な症状と発症からの経過によって確定できます。判断がむずかしい場合は、血液検査で水痘ウイルスに感染しているかどうかを調べます。
治療
妊娠中の感染は重症化しやすいので、すぐに主治医に相談しましょう。
セルフケア
予防
水痘はワクチンで予防できる病気です。かつては一度の感染で生涯免疫が獲得できると考えられていましたが、最近の研究で20 年ほど経過すると免疫が低下することがわかってきました。
【妊婦の予防】
そのため妊娠前に十分な抗体をもっているかどうか確認し、必要に応じて妊娠前にワクチン接種を受けておくと安心です。ワクチン接種は抗体の有無にかかわらず可能です。
水痘ワクチンを接種する際の注意点は次のとおりです。
・妊娠中はワクチン接種ができない
・ワクチン接種後2カ月間は避妊が必要となる
監修
JR東京総合病院 産婦人科 医長
松浦宏美