慢性腎臓病(CKD)まんせいじんぞうびょう・しーけーでぃー
最終編集日:2023/3/29
概要
腎臓は、体内の不要物を排出するための尿をつくる、体内の水分量や電解質のバランスを調整する、ホルモンをつくる、血圧を調整するなど、さまざまな働きをもっています。慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが低下する、あるいは、たんぱく尿が出るといった腎臓の異常がつづく状態で、日本腎臓学会の「CKD診療ガイド2012」では、推定患者数は約1330万人(成人の8人に1人の割合)と発表されています。
腎臓は、慢性的に進行する病気で細胞が障害されると、機能が元に戻りにくくなります。CKDが進行すると腎臓がほとんど機能しない腎不全になって人工透析が必要になるだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの脳や心臓の血管障害のリスクが高くなります。
原因
CKDの原因のひとつとして、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、肥満などの生活習慣病が挙げられます。とくに糖尿病が原因で腎機能が低下する「糖尿病性腎症」はCKDのひとつで、現在、透析導入の原疾患の第一位を維持しています(約4割)。生活習慣病が原因となる以外にも、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、多発性腎嚢胞などの遺伝性の病気や、自己免疫疾患(膠原病など)、薬物なども原因となります。
そのほか、加齢によっても腎機能は徐々に低下し、CKDのリスクが高くなります。
症状
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、初期には症状はほとんど現れません。
機能低下が進み、5段階ある重症度分類のステージ3あたりになると、むくみ、手足のつり、貧血、息切れ、倦怠感などを感じるようになります。夜間にトイレに起きる「夜間尿」もみられます。
さらに進行してステージ4になると、体内の老廃物や毒素を十分排出できない「尿毒症」の状態になりやすく、頭痛や吐き気が現れ、不整脈や呼吸困難などもみられるようになります。ステージ5は「末期腎不全」と呼ばれ、腎機能がきわめて悪い状態を指します。
検査・診断
尿検査、血液検査、画像診断などが行われます。
診断基準として①上記の検査で腎障害の存在が明らかで、基準値以上の尿たんぱくが認められる、②糸球体ろ過量(GFR)が60(mL/分/1.73㎡)未満、のいずれか、あるいは両方が、③3カ月以上つづくと、CKDと診断されます。糸球体は、腎臓にあるフィルターのような役割をもつ部分で、血液をろ過して尿をつくります。GFRはこの機能を表す数値です。
また、腎腫瘍、腎臓結石、ほかの腎臓疾患との鑑別も重要で、腎生検での病理検査が行われることもあります。
CKDと診断されたら、原因となった病気(糖尿病や高血圧症など)、GFR、尿たんぱく、アルブミン量(アルブミンというたんぱく質が尿にどれくらい出ているか)に基づいて、重症度(ステージ1~5)を評価し、治療方針が決められます。
治療
CKDの治療は腎臓だけでなく全身状態をみながら、集学的治療(さまざまな治療法を組みあわせて総合的に進められる治療のこと)が行われます。
ステージによって異なりますが、①腎機能低下の進行を抑える、②腎機能低下による合併症の改善を目標に、原因となる病気の治療、生活習慣の改善、食事療法、薬物療法が行われます。
・原因疾患の治療:血糖値や血圧のコントロール、脂質異常症や高尿酸血症、腎臓のほかの病気の治療など
・生活習慣の改善:禁煙、適度な運動の実践、肥満の解消、十分な睡眠・休養など
・食事療法:塩分(6g未満/日)制限や、ステージにあわせたたんぱく質制限、カリウムやリンなどの制限
・薬物療法:原因疾患の治療薬を含め、それまで飲んでいた薬を見直したうえで、例えば高血圧やむくみ、電解質の異常、貧血など、CKDによってひき起こされている症状の改善のために薬を用いる
これらで効果があまりみられない場合に、腎臓の機能を代替する治療として、透析療法や腎移植が考慮されます。
セルフケア
療養中
CKDと診断されて適切な治療を受けないと、腎機能の低下が進み、腎不全、人工透析になります。また、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高くなります。
ステージが進んだCKDでは、食事や運動、日常生活などにさまざまな制限を受ける可能性がありますが、CKDを進行させないために、また偏った治療(塩分やたんぱく質の過度な摂取制限など)による悪影響を出さないためにも、医師や管理栄養士などの指導を受けながら、腎機能を守る生活習慣の継続に努めましょう。
予防
CKDは症状が現れにくい病気です。加齢も要因のひとつなので、中年を過ぎたら、定期的な健康診断で、腎機能の状態を見つづけることも大切です。また、糖尿病、肥満、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病の改善がCKDの予防につながるので、改善に努めましょう。
監修
しみず巴クリニック 腎臓内科
吉田顕子
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