腎アミロイドーシスじんあみろいどーしす
最終編集日:2024/6/23
概要
体内のたんぱく質が変性してできた、水に溶けにくい線維状の「アミロイド(アミロイドたんぱく)」という物質が、からだのいろいろな部分に蓄積して起こる病気を「アミロイドーシス」といいます。腎アミロイドーシスは腎臓の糸球体や血管、尿細管間質などにアミロイドが沈着する病気です。「アミロイド腎症」とも呼ばれます。アミロイドたんぱくのなかでも、おもに免疫グロブリン軽鎖(AL)、血清アミロイドA(AA)の頻度が高くなっています。血液疾患や関節リウマチなどの炎症性疾患に合併するケースが多いことから、中年以降での発症が多く、平均年齢は70歳前後といわれます。とくにAA型の腎アミロイドーシスは関節リウマチに伴う頻度が高いため、女性に多い傾向があります。
原因
腎アミロイドーシスの多くは、ほかの病気に伴って起こります。アミロイドの蓄積を招くものとして、関節リウマチ、ベーチェット病、多発性骨髄腫、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、慢性骨髄炎、結核など、さまざまな病気が挙げられています。
原因疾患のない原発性のもの(遺伝性のものを含む)、加齢によるものなどもあります。
なぜたんぱく質が変性を起こしてアミロイドの沈着を起こすのかは、まだ解明されていません。
症状
糸球体に沈着すると、腎機能低下、たんぱく尿や血尿が起こり、ネフローゼ症候群をきたすことが多く、まぶたやすねなどのむくみ、食欲不振、倦怠感、尿量の減少、尿の泡立ち、体重の増加などが現れ、腹水や胸水がたまることもあります。
血管や尿細管間質への沈着では腎臓内の血流が障害され、腎機能が低下し、むくみ、倦怠感、尿量の減少、夜間の排尿、血圧の異常などが起こります。
まぶたが腫れぼったい、足が腫れて靴がきつい、指のむくみで指輪がきついなどは、むくみに気づきやすいサインといえます。
検査・診断
症状や既往歴の問診から腎アミロイドーシスが疑われる場合は、尿検査、血液検査を行い、腎生検で確定診断をつけます。腎生検は腎臓の細胞を採取して、組織へのアミロイドの沈着の有無を調べます。腎生検が行えない場合には、胃や直腸の粘膜による生検でも診断がつきます。
また、画像検査などで心臓や消化管、末梢神経など、ほかの部分にアミロイドーシスが起きていないかも精査します。複数の臓器に沈着が起こるものを「全身性アミロイドーシス」と呼び、鑑別が必要です。
アミロイドーシスの原因となる病気が不明な場合は、消化管の内視鏡検査や骨髄検査など、原因疾患を特定する検査も行われます。
治療
現時点では、すでに沈着したアミロイドを除去することはできないため、さらなるアミロイドの産生を抑えることが治療の目的になります。おもに次のような治療を行います。
●原因疾患の治療
関節リウマチ、炎症性腸疾患など、腎アミロイドーシスを起こしている病気の治療を行います。原因疾患が軽快されると、腎アミロイドーシスも改善される場合が多くみられます。
●慢性腎臓病の進行に合わせた対症療法
高血圧、高尿酸血症、腎性貧血、電解質異常などに対する薬物療法や、むくみ(浮腫)が強い場合は、塩分制限・利尿剤投与、末期腎不全に至る場合は、腎代替療法などを検討します。
また、ほかの臓器にアミロイドーシスを起こしている場合には、臓器に合わせて、心機能や肝機能、消化管機能、末梢神経症状の改善などの治療を行います。
●腎アミロイドーシスを進行させない治療(背景となる疾患の治療を含む)
ステロイド薬(デキサメタゾン)、抗がん剤(メルファラン)、多発性骨髄腫の治療薬(サリドマイド、ボルテゾミブ、レナリドミド)、関節リウマチの治療薬(TNF-α阻害薬、トシリズマブ)などを用いた薬物療法が行われています。原因疾患によっては、骨髄幹細胞移植や肝腎移植なども検討されます。効果がみられる場合もありますが、一部は保険適用外で、標準治療として確立されるには至っていないのが現状です。
セルフケア
療養中
腎アミロイドーシスとわかったら、腎機能を温存・改善するために、食事をはじめ、運動、休養・睡眠、ストレス解消など、医師の指導に従って生活面の見直しを行いましょう。かぜなどの感染症にかからないようにすることも大切です。
定期的な通院と検査を怠らず、適切なケアを継続すれば、寛解(完治ではないが症状が治まっている状態)を得ることもできます。
監修
しみず巴クリニック腎臓内科
吉田顕子
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