慢性腎不全
まんせいじんふぜん

最終編集日:2022/1/11

概要

腎臓は血液から老廃物や不要な電解質をろ過して、尿をつくる働きをします。数カ月から数十年の長い年月をかけて、その腎機能が徐々に低下し、正常なときの30%以下となり、尿量が減少し、体内の水分や電解質のバランスが乱れる状態をいいます。重症化するとやがて末期腎不全に陥り、透析療法や腎移植が必要になります。

原因

長期にわたって腎臓に障害を与える病気を総称して慢性腎臓病(CKD)といい、慢性腎不全に到る要因とされています。糖尿病性腎症、腎硬化症、慢性糸球体腎炎などが代表的な疾患です。

症状

慢性腎臓病では、初期は自覚症状があまり現れません。はじめにみられる症状は、排尿回数の増加で、夜間尿、倦怠感、貧血などです。やがて尿毒症の症状として、だるさ、無気力、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢のほか、水分の排泄が悪くなるため高血圧も起こってきます。さらに進行すると、幻覚けいれん、昏睡などが現れます。

検査・診断

腎機能低下の確認だけではなく、全身状態の把握や原疾患の推定もあわせて行うことが重要です。

血液検査で、血清クレアチニン(Cr)の上昇、eGFR(推算糸球体ろ過値)の低下などを、尿検査で尿たんぱく(+陽性)、尿潜血(+陽性)などを調べます。

腎臓の形や大きさ、腎臓につながる血管や尿路の異常、ほかの部分の異常の確認が必要な場合は、腹部超音波検査、腹部単純X線検査、腹部CT(単純・造影)、経静脈性腎盂造影などの画像検査や腎生検、アイソトープ検査などを行う場合もあります。

治療

一度壊れてしまった腎機能を回復させるよい方法はありません。そのため、これ以上腎不全が悪化しないよう合併症を予防し、透析治療への移行を遅らせることが治療の目的になります。

慢性腎臓病の原因となっている疾患は多いため、まずはその原因疾患の治療法を行います。どの慢性腎臓病にも共通することとして、食事療法や薬物療法(薬による治療)のほか、腎臓の負担を減らすための生活習慣改善が重要になってきます。

●生活習慣の改善

メタボリックシンドロームの改善、禁煙、感染症予防、適度な運動

●食事療法

たんぱく質、塩分、カリウム、リンの摂取制限と、カロリー、水分の適切な摂取

●薬物療法

慢性腎不全の特効薬はないため、腎機能低下の進行程度や原因疾患、合併症などに応じて、降圧薬や血糖降下薬、脂質改善薬のほか、利尿薬、免疫抑制剤、漢方薬などを使用します。必要があれば、心不全または貧血に対する治療薬も使用します。尿毒素物質を取り除く活性炭の内服も検討します。

上記のような治療の効果がみられず、さらに腎機能の低下が進み、末期の腎不全となった場合は、透析療法や腎臓移植を行います。

セルフケア

予防

腎機能が低下するスピードは、腎不全の原因疾患と腎不全のコントロールがかかわってきます。

職場や自治体の健診などでたんぱく尿や血尿が出た場合や、血液検査で腎機能低下が疑われた際は、症状がなくても放置せずにすみやかに医師に相談しましょう。糖尿病や高血圧症もリスク要因となるため、肥満、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣を改善することが必要です。

ふだんの生活では、脱水や感染症、過労やストレスを避けることです。激しい運動も控え、冷えにも注意しましょう。

監修

しみず巴クリニック腎臓内科

吉田顕子

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