IgA腎症
あいじーえーじんしょう

最終編集日:2024/5/27

概要

腎臓は血液中の老廃物などをろ過して、尿として排泄する働きをもっています。この働きをおもに担っているのが「糸球体」です。糸球体は毛細血管が毛糸の球のようになった組織で、片方の腎臓に約100万個あるとされています。

この糸球体に慢性の炎症が起こり、徐々に硬化するために腎機能が低下するのが「慢性糸球体腎炎症候群」で、IgA腎症はそのひとつです。慢性糸球体腎炎症候群のなかでもっとも頻度が高く、発症率は年に10万人あたり3.9~4.5人と推定されています。

治療をしないと約40%が末期腎不全に進行し、厚生労働省の指定難病となっています。

原因

糸球体にIgAという免疫グロブリン(抗体)が沈着することで引き起こされます。IgAは腸管や分泌液(鼻汁、唾液、涙など)に多く含まれ、鼻やのど、目などの粘膜から細菌やウイルスなどが侵入するのを防ぎます。

糸球体に沈着するのは糖鎖異常IgAという異常なIgAで、のどの扁桃腺が糖鎖異常IgAの産生にかかわっていると考えられています。しかし、なぜ異常なIgAが沈着するのかはまだわかっていません。遺伝的な要因も関与するとされています。

症状

初期には無症状のことがほとんどで、健康診断やほかの病気の尿検査で、たんぱく尿や血尿を指摘されて見つかります。

扁桃腺炎や上気道感染を主とする感染直後に、肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)が現れて発見されることもあります。

進行すると腎機能が低下し、むくみや高血圧が現れます。

ネフローゼ症候群」という病態を併発すると、大量の尿たんぱくと低アルブミン血症が起こるため、強いむくみ、腹水、胸水、尿量の減少などがみられることもあります。

検査・診断

尿検査でたんぱく尿と血尿を確認します。確定診断には、腎生検による病理組織診断が行われますが、その適応は、患者さんの性、年齢、社会的背景なども考慮して症例ごとに検討します。

尿たんぱくの量、推算糸球体ろ過量(eGFR:腎臓の排泄機能を評価する指標)、腎不全を起こし人工透析になるリスクの程度、高血圧の有無などから、重症度を判断します(低リスク群~高リスク群)。

ループス腎炎、肝性糸球体硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患による二次性IgA腎症などとの鑑別が必要です。

治療

腎機能の低下がみられない軽症例では、自然に改善されることがあるため、尿たんぱくの量が少ない、高血圧がない場合には、経過観察を行います。

尿たんぱく量が多く(0.5~1.0g/日〈g/gCre〉以上)、高血圧がある場合には、重症度にあわせた治療を行います。

低リスク群では、糸球体の炎症を抑えるステロイド薬の内服を行います。抗血小板薬を用いることもあります。抗血小板薬は、短期的に尿たんぱく量を減少させる可能性が考えられています。

中リスク群・高リスク群では、糖鎖異常IgAを産生しているとされる扁桃腺を摘出する手術(扁桃摘出術)、大量のステロイド薬を短期に投与するステロイドパルス療法、抗血小板薬、免疫抑制薬、降圧薬(レニンアンジオテンシン系阻害薬)などを、病状にあわせて組みあわせて行います。

高リスク群で薬物治療や扁桃摘出術でも改善効果が乏しい場合は、末期腎不全の予防と人工透析治療の開始を遅らせることが治療の目的になります。薬を変更する、セルフケアを続けてほかの生活習慣病の予防・改善に努め、腎機能維持の補助とすることなどを行います。

セルフケア

療養中

食事や生活習慣が病状の悪化などを招く可能性が指摘されています。次のようなことに留意して、病状の改善に努めましょう。


●食塩摂取は1日3g以上6g未満にする。

●たんぱく質摂取については医師と相談のうえ制限するかどうかを決める。

●肥満を改善・予防する。

●禁煙、節酒。

●病状にあわせた運動を行う。

監修

しみず巴クリニック腎臓内科

吉田顕子

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