胃がんいがん
最終編集日:2025/12/20
概要
胃がんは胃の粘膜(粘膜上皮)に発生する悪性腫瘍で、約9割以上が腺がんです。
胃壁は内側から、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)の順に層構造をなしており、がんが粘膜下層までにとどまるものを「早期胃がん(表在型胃がん)」、筋層より深く浸潤したものを「進行胃がん」と分類します。
日本における胃がんの年間の罹患者数は約12万4000人で、部位別がん罹患数では、男性で第3位、女性で第4位です。(全国がん登録2019年)50代以降に増加し、80歳代でピークを迎え、男女比は2対1で男性に多くみられます。若年層でのピロリ菌の感染率低下が、高齢者に多いがんである背景の一因と考えられています。
原因
胃がんの発症にはヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染が強く関与しており、胃がん患者の約90%に感染が認められます。またピロリ菌に感染していると、非感染者と比べて胃がんの罹患リスクは約5倍になるとされています。
そのほか、喫煙や塩分の多い食品の継続的な摂取もリスク因子とされています。

症状
初期にはほとんど症状はみられません。がんがある程度進行すると、食欲不振、胃もたれ、胸やけ、げっぷ、胃痛が起こり、さらに、がんやその周辺からの出血による黒い便(黒色便)、出血量が多い場合は下血、吐血などが現れることがあります。
検査・診断
胃がんが疑われる場合、胃内視鏡(胃カメラ)検査(上部消化管内視鏡検査)を行って、病変の部位や大きさ、胃壁のどの深さまで浸潤しているか(深達度)、性質(悪性度)などを精査します。
胃壁の表面の変化に乏しい「スキルス胃がん」が疑われる場合には、バリウム検査(胃X線検査)を併用し、胃壁の伸展性や形態を評価することがあります。さらにがんの広がりやリンパ節・遠隔転移の有無を確認するために、造影CT検査を中心に、必要に応じてMRI検査やPET検査などが行われます。腹膜や腸管への転移が疑われる場合には、注腸X線検査(肛門からバリウムを注入してX線で大腸をみる)、大腸鏡検査などが行われます。
胃がんの腫瘍マーカーとしてCEAやCA19-9が挙げられますが、早期発見には有用性が低く、おもに進行がんの治療効果判定や再発の指標として用いられます。鑑別診断として、胃潰瘍、胃ポリープ、悪性リンパ腫などが挙げられます。
治療
治療の基本はがんの切除です。まずリンパ節転移の可能性を評価したうえで、がんの深達度、組織型、潰瘍合併の有無、患者さんの年齢や全身状態などを総合的に判断し、内視鏡治療(内視鏡的切除)、あるいは外科手術が選択されます。遠隔転移などにより切除が困難な場合には薬物療法が中心となります。
●内視鏡治療(内視鏡的切除)
早期胃がん治療の約6割を占めるといわれています。内視鏡治療には「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」があります。
内視鏡治療は、リンパ節転移リスクが極めて低い早期の胃がんに適応されます。適応となるのは、潰瘍を伴わない分化型粘膜内がんで2cm以下の場合です。潰瘍の有無や未分化型などでの適応拡大が認められていますが、詳細は専門医により慎重に判断されます。
●手術
内視鏡治療の対象とならない場合は、手術が考慮されます。切除部位によって「胃全摘術」「幽門側(出口側)胃切除」「噴門側(入口側)胃切除」から術式が選択されます。術後にやせ、体力低下、ダンピング症候群(食後のめまい、動悸、脱力感など)、貧血など、何らかの障害が起こりやすいため、可能な限り胃を残す方法が試みられています。
① 腹腔鏡下胃切除術(腹腔鏡手術)
早期胃がんには腹腔鏡手術が広く行われています。また、一部の進行胃がんに対しても腹腔鏡手術が認められるようになりました。最近は、腹腔鏡よりも精緻な技術が可能になった手術支援ロボットを用いた「ロボット手術」も普及し始めています。
② 開腹手術(手術)
進行胃がんが対象となります。再発を抑えるために、抗がん剤などによる術後補助化学療法を行うことがあります。なお、内視鏡治療適応の可否の判断を専門医でも迷うような境界例に対しては、まず内視鏡治療を行い、病理組織検査でリンパ節転移の可能性が1%以上であると診断された場合、追加の治療として腹腔鏡手術を行うという方法がとられることがあります。不要な胃切除を避けられる方法として認められています。
●薬物療法
手術が適応とならない進行胃がんでは、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを組みあわせた薬物療法が行われます。
なお、薬物療法により腫瘍の縮小や転移巣の消失が認められた場合には、治療方針を再評価し手術を行う「コンバージョン手術」が選択されることがあります。
セルフケア
予防
胃がん予防には、ピロリ菌感染の有無を調べ、感染が確認された場合には除菌治療を行うことが重要です。ただし除菌後も胃がんのリスクが完全になくなるわけはありません。そのため、除菌後であっても定期的な内視鏡検査による経過観察がすすめられます。近年では、ピロリ菌陰性の胃に発生する「ラズベリー様胃がん」という新しいタイプの胃がんが報告されています。ピロリ菌感染歴がない人でも、医師と相談の上、定期的な内視鏡検査を受けることが望ましいとされています。
監修
わだ内科・胃と腸クリニック
和田蔵人