食道がん
しょくどうがん

最終編集日:2023/5/18

概要

食道は下咽頭の下端(第6頸椎〈けいつい〉の位置)から胃の入り口までをつなぐ管状の臓器です。蠕動(ぜんどう)運動で食物を胃に運びますが、消化液を分泌するなどの消化機能はありません。成人で25㎝程度の長さで、口に近いほうから、頸部食道、胸部食道、腹部食道に分けられます。

食道がんは食道のどの部分にも発生しますが、胸部中部が約50%、次いで胸部下部、胸部上部、腹部、頸部の順となっています。食道周囲にはリンパ節が多く分布していることからリンパ節転移を起こしやすいこと、多発しやすいこと、頭頸部がん(下咽頭がん、中咽頭がん、喉頭がんなど)、胃がんの合併率が10~20%と高いことも特徴です。健康診断や人間ドック、ほかの病気の検査(上部消化管内視鏡検査、バリウムを用いたX線検査など)で見つかることがほとんどです。1年間の発症率は10万人あたり18人程度で、60~70代が約70%を占め、男女の比率は6対1で男性が多くなっています。

食道の壁は、内側から粘膜(粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板)、粘膜下層、固有筋層、外膜の構造になっています。食道がんの90%以上が、粘膜上皮を覆う「重層扁平上皮」に発生する扁平上皮がんです。食道壁への深達度が粘膜内にとどまるものを「早期食道がん:T1a」、粘膜下層までしか及んでいないものを「表在食道がん:T1b」といい、T1aとT1bが早期がんにあたります。固有筋層以上に深く及んでいるものを「進行食道がん:T2~T4b」としています。食道がんの進行度(stage)は、がんの悪性度、食道壁への深達度、リンパ節や他臓器への転移の有無などを総合的に評価して診断されます。なお、食道がんの5年生存率は57.1%ですが、早期食道がんで内視鏡的切除が適応となる場合の5年生存率は95%以上といわれています。

原因

喫煙、飲酒がリスク要因として挙げられます。とくにビールコップ1杯などの少量のアルコールで吐き気、動悸、顔面紅潮などが起こる、極端にアルコールに弱い「フラッシャー」と呼ばれる人は、2型アルデヒド脱水酵素の働きが弱く、アセトアルデヒドが分解されずに体内に残ってしまいます。そのことが食道がんの発がんリスクを高めるとされています。なお、食道がんのまれなタイプである食道腺がんでは逆流性食道炎やバレット食道などの疾患が発生リスクと考えられています。

食道

症状

早期には自覚症状はありません。T1bのがんでは、熱い食べ物・飲み物が染みる感じや、嚥下(えんげ)時の違和感などが起こりますが、無症状のこともあります。がんがある程度進行すると、食事がつかえる感じ、嗄声(させい)、長引くせき、体重減少などが現れます。とくに食事のつかえ感は典型的な症状です。さらに重症になると流動物も通らなくなります。嗄声はリンパ節の転移やがんによる圧迫で反回神経が障害されて起こります。

検査・診断

問診の後、食道X線検査、上部消化管内視鏡検査で画像診断を行い、内視鏡下で組織を採取して病理組織診断を行います。T1aの初期のがんでは、内視鏡下食道ヨード染色や内視鏡下狭帯域光観察(NBI:2色の光をあてて病変を観察する方法)などを用いて、肉眼では見つけにくい病変を捉えます。

がんの進行度の評価のために、そのほか、造影X線検査、超音波内視鏡検査(EUS)、CT、PETなどが行われます。また、侵襲の大きい治療法を選択する可能性が高いことから、呼吸機能、腎機能、肝機能などの評価も重要になります。

治療

内視鏡的切除、手術、化学放射線療法などがあり、進行度、患者さんの全身状態、年齢、持病などに合わせて選択されます。治療は効果と副作用を評価しながら進められます。


●内視鏡的切除

T1aの治療の第一選択となります。内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。いずれも粘膜下層に薬液を注入して病変部を浮き上がらせ、ワイヤをかけて焼き切る(EMR)、または粘膜層を剥ぎ取るように切除する(ESD)治療法です。最近はESDが主流になっています。ESDは広範囲に及ぶ病変でも一度に切除できますが、食道を4分の3周以上するような病変では切除後に狭窄(きょうさく)が起こるリスクが高く、予防処置としてバルーン拡張術やステロイド局注などを行うことがあります。


●手術

T1bと進行食道がんでは、手術が標準治療となります。例えば胸部食道がんの場合、胸部食道全摘、胃上部の一部を切除し、頸部・胸部(縦隔)・腹部のリンパ節郭清、さらに胃管挙上による食道の再建術を行います。開胸・開腹が必要な大きな手術でしたが、最近は胸腔鏡や手術支援ロボットを用いた手術が増え、患者さんの負担も軽減されています。

進行食道がんでは、術前化学療法でがんを小さくしてから手術を行うことが一般的です。5-FU、シスプラチン、ドセタキセルなどの薬剤を組み合わせて用います。


●化学放射線療法

がんが周囲の臓器や血管に広がっているような症例では、手術は適応となりません。化学療法と放射線療法を組み合わせた化学放射線療法が行われます。また、手術に耐えられない可能性のある高齢の患者さんや全身状態のよくない患者さんにも適応されます。使用薬剤は、5-FU、シスプラチンで、効果がみられない場合にパクリタキセルやドセタキセルが用いられます。


●免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ぺムブロリズマブ)

化学放射線療法で効果が見込めない場合に適応されます。免疫チェックポイント阻害薬の単剤療法と2種類服用する併用療法、化学療法との併用療法があります。


●光線力学療法(PDT)

手術で取り切れなかったがんや、再発食道がんに適応されます。がん細胞に集まる光感受性物質をあらかじめ注射し、その後、内視鏡的にレーザー光を照射してがん細胞を死滅させる新しい治療法です。再発がんでも寛解が見込める症例が増えるなど、今後、普及が進むと期待されています。

セルフケア

予防

食道がんにならないためには、禁煙、節酒を心がけることが第一です。

また、国立がん研究センターがん対策研究所の調査によると、野菜・果実の摂取量が多いと食道がんのリスクが低下する、とくにキャベツ・大根・小松菜などのアブラナ(十字花)科の野菜に有意な関連がみられたということです。

食道がんは早期の段階で症状が現れにくいため、60歳以上になったら胃がんの予防も兼ねて、1~2年に1度、上部消化管内視鏡検査を受けて食道の様子をチェックすることがすすめられます。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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