胆嚢がん
たんのうがん

最終編集日:2024/3/28

概要

胆嚢は肝臓の下にある10㎝×4㎝程度の、洋梨のような形をした臓器です。肝臓と十二指腸に胆管を介してつながっています。肝臓でつくられた胆汁をためる・濃縮する・分泌する働きをもっています。

胆嚢に発生するのが胆嚢がんで、1年間の新規患者数は約8000人(2017年がん統計)。60代以降に好発し、女性の発症が男性の1.5~2倍とされています。なお、胆嚢がんと、胆管に発症するがんを総称して「胆道がん」と呼ぶこともあります。

原因

胆道拡張症や膵・胆管合流異常(胆管と膵管の合流部分に先天的な異常がある)、胆嚢腺筋症があると、胆嚢がんの発症リスクが15~40%高くなるとされています。また、胆嚢がんの患者さんの約半数は胆石症を合併しているといわれることから、胆石症との関係も指摘されています。

胆嚢がん
胆嚢がん

症状

胆嚢がんは症状が現れにくく、腹部超音波(エコー)検査などで偶然見つかる場合が多くなっています。見つかったときにはすでに進行がんの状態であることも少なくありません。進行すると、みぞおちや右上腹部の痛み、黄疸(おうだん)、右上腹部にしこりが触れる、吐き気・嘔吐、食欲不振、体重減少が起きてきます。胆石症や胆嚢炎を併発すると、比較的早い段階で上腹部の疼痛(とうつう)や黄疸などの症状がみられます。

検査・診断

血液検査でビリルビンやALP、γ-GTPなどの肝・胆道系の酵素の異常を探ります。あわせて腫瘍マーカー(CA19-9、CEA)を測定します。

画像検査としては腹部超音波検査、CT検査のほかに、MRI検査で胆嚢、胆管を描出するMRCP検査が有用です。また、内視鏡を用いた超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、管腔内超音波検査(IDUS)などが行われます。遠隔転移が疑われる場合には、PET検査を行います。

胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋症(胆嚢壁が厚くなる疾患)などとの鑑別診断が必要です。

胆嚢は内側から、粘膜上皮、粘膜固有層、筋層、筋層周囲結合組織、漿膜(しょうまく)と複数の層からなり、がんの深達度やリンパ節転移の有無などをもとに進行度(ステージ)が決められます。


●0期・Ⅰ期:がんが胆嚢のなかの筋層までにとどまって、リンパ節、胆管、肝臓への浸潤(広がること)がない。

●Ⅱ期:がんが筋層周囲結合組織までにとどまって漿膜や周囲の肝臓へは浸潤していない。

●Ⅲ期:原発巣(胆嚢がん)と直結した「領域リンパ節」への転移が1~3個、あるいは、がんが漿膜を越えていて、肝臓や胃、十二指腸などに転移している。

●Ⅳ期:領域リンパ節以外のリンパ節や離れた臓器に転移している。

治療

治療の基本は胆嚢の切除です。しかし、見つかったときにすでに転移がある進行がんの状態で、手術が適応されないケースも少なくありません。手術ができない場合には、化学療法と放射線療法が行われます。また、胆管の閉鎖を伴い、黄疸が起きている場合には、胆汁の流れを取り戻して黄疸を改善するために、内視鏡下にチューブやステントを留置する「胆道ドレナージ」を行います。


●手術

早期であれば、胆嚢だけを切除すれば済みますが、進行がんではがんが浸潤している胆管、肝臓の一部、膵頭十二指腸、大腸の一部、リンパ節なども切除します。基本的に開腹手術で行われます。胆嚢がんに対する術前、あるいは術後補助化学療法は、現時点では有効性を示すものはなく、研究の段階です。


●化学療法

抗がん剤を用いた全身化学療法が行われます。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬で胆嚢がんに有効なものは、まだありません。


●放射線療法

放射線療法の治療効果についての十分なエビデンスがないため、いまだ標準治療として確立されていません。おもに症状緩和を図る目的で、また切除後の補助的な役割で行います。

セルフケア

予防

胆嚢がんは0期・Ⅰ期で見つけて切除術を受ければ、5年生存率は90%以上とされています。しかし、Ⅱ期になると35~45%になり、Ⅳ期では5%前後まで下がってしまいます。自覚症状に乏しい胆嚢がんを早期発見するには、好発年齢を迎える前の50代くらいから、人間ドックや健康診断で腹部超音波検査を受けることがすすめられます。また、胆石症や胆嚢ポリープの既往のある人は定期的な経過観察や適切な治療を受けるようにしましょう。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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