虫垂炎ちゅうすいえん
最終編集日:2022/4/4
概要
小腸と大腸の間にある盲腸に付いている突起を虫垂といいます。この虫垂に炎症が起こるのが虫垂炎で、一般的に「盲腸」と呼ばれています。
炎症の原因はさまざまで、腹痛や発熱、吐き気などの症状が現れます。子どもから大人までどの年代にも発症しますが、もっとも多いのは10~20歳代の若者といわれています。虫垂炎そのものはこわい病気ではありませんが、ひどくなると腹膜炎などを起こして命にかかわることもあります。
原因
虫垂が炎症を起こす原因は、腸内に長くとどまっている異物(便が硬くなった糞石など)が虫垂をふさいだりして血流が悪くなることと考えられていますが、そのくわしい原因はわかっていません。
炎症を起こした虫垂は、さらに腸内細菌による感染を起こしたり、外部からの細菌で炎症を起こしやすくなったりします。感染のきっかけとして、食べすぎや飲みすぎ、不規則な生活、かぜ、便秘、過労などが挙げられます。
症状
必ず現れる症状は腹痛です。腹の右下部分が痛むといわれますが、初期段階ではみぞおちやへその周りから痛み出します。その後、吐き気や嘔吐が現れ、腹痛は、位置を変えながらだんだんと強くなります。症状が進むと、歩くと腹の右下部分に痛みを感じ、この部分の腹筋が緊張して腹が硬くなることもあります。
このように痛みを感じる場所が病状の進行具合によって移動するのが虫垂炎の特徴です。ただし、こうした経過をたどらないケースも少なくありません。乳幼児は腹全体が痛いと感じ、高齢者はそれほど痛みを感じないこともあるようです。
症状が進むと、虫垂に穴が開いたり破裂したりして急性腹膜炎を起こす危険性があります。
検査・診断
診断は、問診と触診、身体診察で痛みを感じる場所と程度を確認します。腹部を直接触診するだけで虫垂炎が判明することもあります。
また、血液検査を行い、白血球の数が増加していないかどうかなどをチェックします。虫垂炎の診断がはっきりしない場合や炎症の度合いを確認する場合には、腹部超音波検査、CT検査などの画像検査を必要に応じて行います。
治療
治療の基本は手術ですが、軽症の場合には抗生物質による保存的治療を行う場合もあります。
保存的治療を行っても症状が治まらない場合、虫垂の周囲にうみがたまっていたり穴が開いていたりした場合には、それらが見つかった時点で緊急手術となります。
そのような状態でなくても炎症が強い場合や、発症から時間がたっている場合は手術が必要になります。
手術では炎症を起こした虫垂を切除します。手術の方法として開腹手術のほか、からだへの負担の少ないと腹腔鏡手術があります。
セルフケア
予防
虫垂炎は発見が遅れると腹膜炎などの危険な合併症をひき起こします。そうならないためには、早期の発見と治療が必要です。
腹痛を感じる場所が、みぞおち周辺から右下に移動するのが虫垂炎の特徴的な症状といわれていますが、このような症状が現れるのは全体の50%程度です。自己判断の基準として、みぞおちから右下に移動するような腹痛を感じたら、痛い場所を上から手で押してみます。押しても痛みを感じなければ便秘や軽い腸炎、痛みがあれば虫垂炎の可能性があります。とくに押したときより手を放したときのほうが痛い場合は、腹膜炎の特徴的所見で、腹膜への炎症の波及が疑われます。
子どもの場合は、腹痛の状態を正確に伝えるのはむずかしく、発見が遅れてしまうケースがみられます。子どもが腹を痛がっていたら、まず触ってみて、嫌がらないかどうかが判断の目安となります。いつもと違うと感じたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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