大腸憩室症
だいちょうけいしつしょう

最終編集日:2023/3/23

概要

大腸壁の一部が外側に突出してしまう病気です。突出部分を「憩室」(けいしつ)と呼んでいます。上行結腸に起こりやすく、40代から患者数が増え始め、加齢とともに増加、80歳以上の40~60%にみられるとされています。複数個の大腸憩室が存在するケースが多いようです。

基本的に良性の病気で、症状もなく経過しますが、1年で0.2%、5年で2%、10年で10%の割合で憩室からの出血が(大腸憩室出血)、その3倍の割合で炎症が起こり(大腸憩室炎)、その場合は治療が必要になります。


原因

大腸に栄養を送る細い血管(動脈)が腸管に入ってくる部分では、血管が腸壁を貫いているため、壁が薄くなっています。加齢に伴って腸壁の弾力が低下したり、便秘などで腸管の内圧が上昇したりすると、弱い部分の腸管壁が外側にふくらんで憩室ができるとされています。症状を起こすきっかけは明らかになっていませんが、下痢や便秘の関与が考えられています。

症状

大腸憩室症は通常は無症状ですが、大腸憩室出血、大腸憩室炎を起こすと、次のような症状が現れます。

●憩室出血

突然の血便、肛門からの出血があります。腹痛は伴いません。出血がつづくと、貧血症状(立ちくらみ、めまい、ふらつきなど)が起こることがあります。

●憩室炎

腹痛、発熱、圧痛が現れます。炎症が腹膜に波及すると反跳痛(押したときより放したときに強い痛みが生じる)などの腹膜炎症状を呈します。また腸の動きが悪くなり、腸の音が聞こえなくなります。炎症が強くなって腸壁に穿孔(せんこう:穴が開く)が起こると、ショック状態に陥ることもあります。

検査・診断

●憩室出血

肛門から内視鏡検査を行い、腸管からの出血であることを確認して診断をつけます。その後、造影CTで造影剤の漏出箇所=出血箇所を特定します。

●憩室炎

症状から大腸憩室炎が疑われたら、CTや超音波(エコー)検査で、痛みのある部分に憩室があることを確認し、周辺の炎症の様子を把握します。


治療

●憩室出血

大腸憩室からの出血が自然に止まる確率は、70~90%とされています。内視鏡や造影CTで出血の様子を精査し、軽度であれば絶食して腸管を安静に保ちます。出血が強い場合には、出血を止めるために緊急処置として、内視鏡的止血(出血部位にクリップをかける)や、血管内治療(太ももの付け根からカテーテルを入れて出血箇所の血管を塞栓する)が行われます。その後、絶食治療を行います。

どちらの場合も1週間程度の入院が必要になります。

●憩室炎

軽症であれば、抗菌薬を投与して経過観察を行います。外来治療も可能ですが、炎症が強ければ、絶食、抗菌薬投与で、入院加療となります。穿孔を起こしている場合は、手術が必要になります。


セルフケア

療養中

大腸憩室症は、健康診断での大腸内視鏡検査で見つかることがほとんどです。症状がなければ、治療の必要はありません。突然の出血やほかに思い当たる原因のない腹痛・発熱が起きたら、受診の際に大腸憩室があることを医師に伝えましょう。

憩室出血、憩室炎ともに再発しやすく、とくに1年以内の再発率が、憩室出血で20~35%、憩室炎で10%前後とされています。症状がみられたら、速やかに受診しましょう。特に憩室出血は動脈からの出血で貧血症状を起こしやすく、出血が重度だと転倒や失神を起こすこともあるので、注意が必要です。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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