虚血性大腸炎
きょけつせいだいちょうえん

最終編集日:2023/3/23

概要

大腸に栄養を運ぶ動脈(上・下腸間膜動脈、内腸骨動脈)に閉塞や狭窄がないにもかかわらず、何らかの原因で大腸の末梢血管に十分な血液が送られなくなって、腸管が虚血状態になる病気です。一過性型、狭窄型(腸管の一部が狭窄する)、壊死型(血流が滞り、組織が壊死する)に分けられ、多くは一過性型で、おもに下行結腸とS状結腸に起こります。

50歳以上に好発するとされますが、若年層でも起こり得ます。女性に多いとされています。

原因

どのように発症するか、まだくわしいことはわかっていませんが、末梢血管の循環を悪化させる、動脈硬化、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病や、心房細動、心臓弁膜症などの心疾患の既往のある人は、高リスク群とされています。

また、便秘の人に起こりやすいといわれています。さらに女性ホルモン薬の内服が影響することも報告されています。

症状

突然の左下腹部痛と圧痛が起こり、つづいて下痢、血便をみます。痛みとともに、吐き気・嘔吐、冷や汗を伴うこともあります。夜間から早朝にかけて発症することが多いようです。

壊死型では腸管に壊死や穿孔(せんこう:穴が開く)が起こるため、症状はより強く、ショック状態に陥ることもあります。

検査・診断

症状と病歴などの問診、大腸内視鏡検査が行われます。大腸内視鏡検査で確定診断がつきますが、腹痛などの症状が強い場合は、腹部CTを先行し、症状が軽くなってから内視鏡検査を行うこともあります。腸管の狭窄などをみる注腸造影検査が行われることもあります。

感染性腸炎、抗生物質起因性腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸憩室症、クローン病などとの鑑別診断が必要です。

治療

一過性型や狭窄型の虚血性大腸炎は保存療法で改善することがほとんどです。絶食、安静、輸液を数日から1週間行います。腹痛が強い場合には鎮痛薬や鎮痙薬を用います。多くは1週間程度で治癒します。

壊死型や、保存療法で改善しなかった狭窄型では手術が行われます。壊死型は虚血性大腸炎の約10%を占めるにとどまりますが、緊急性の高い状態であり、死亡率が50%ともいわれます。速やかに適切な治療を受ける必要があります。

セルフケア

病後

虚血性大腸炎の多くは一過性で、予後のよい良性の病気ですが、6~12%に再発がみられるとされています。ハイリスクの基礎疾患を治療・コントロールし、便秘の改善に努めることなどが再発予防につながります。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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