潰瘍性大腸炎
かいようせいだいちょうえん

最終編集日:2022/4/4

概要

大腸に炎症が慢性的に起こる原因不明の病気です。とくに肛門近くの直腸がただれて、潰瘍などを発症します。肛門近くから盲腸まで炎症が広がるケースも少なくありません。

多くの患者さんが下痢と下血をくり返しますが、この状態が長くつづくと大腸がんのリスクが高まります。欧米で多い病気でしたが、近年では日本でも増加傾向にあり、小学生から50歳以上まで幅広い年代で発症する可能性があります。難病指定されている病気のひとつです。


原因

潰瘍性大腸炎を発症するメカニズムはわかっていません。遺伝的な素因に過労やストレス、細菌やウイルスへの感染、食事や生活習慣など、いくつもの要因が重なって発症するのではないかと考えられています。

症状

腹痛と下痢が起き、やがて便に血液(血便)や粘液が混じるようになります。排便の回数が増え、排便後に、便を出し切れていないように感じることもあります。下痢と血便は、比較的長くつづき、炎症が広がると便にうみが混じることもあります。さらに進行すると、発熱、動悸、倦怠感などに加え、貧血や体重減少などの症状が現れます。また、口内炎や関節痛、皮膚の炎症などがみられる場合もあります。

治療によって症状が一度は改善しても、完治することはなく、何らかのきっかけで再発をくり返します。また、関節炎や膵炎などの合併症がみられることがあります。


検査・診断

まずは問診で、いつどのように発症したのか、今の状態などをくわしく聞きとります。下痢症状が2~3週間以上つづき、潰瘍性大腸炎が疑われる場合には、血液検査、X線検査、内視鏡を使った大腸検査を行います。

大腸内視鏡検査では、炎症の程度や範囲などを確認し、必要な場合には炎症を起こしている部分の組織を採取して顕微鏡で観察する病理検査も行います。

ほかの病気と鑑別するために便の培養検査を行い、下痢の原因となる感染症などがないかを調べます。また、潰瘍性大腸炎の発症から10年以上経過した頃に大腸がんが見つかることがあるため、定期的に大腸の検査を受けることが望ましいとされています。


治療

完治する病気ではありません。軽症の場合は通院で治療ができますが、中等症から重症の場合は入院治療が必要です。治療は基本的に、腸管の炎症を落ち着かせ免疫反応を抑える薬を使った薬物療法となります。

体重減少などの症状がみられ、栄養状態がよくない場合には、高カロリー輸液などを点滴注射し、栄養状態の改善も並行して行います。症状が悪化して大出血を起こしたり、腸壁に穴が開いたり、中毒性巨大結腸症など合併症を発症した場合には緊急手術となります。

薬を使った治療で効果がみられない場合には、手術など外科的治療についても検討します。潰瘍性大腸炎は、治療によって症状が治まっても何らかのきっかけで再発をくり返す病気のため、食事を中心とした生活指導も行います。


セルフケア

病後

治療によって症状が一度治まっても、何らかのきっかけで再発してしまう可能性がある病気です。そのため、再発を防ぐために日頃から注意する必要があります。

適切な治療を受け、食事などの注意事項を守れば、普通の生活を送ることができます。ただ、10年以上経過した潰瘍性大腸炎は、大腸がんを発症する危険性が高いといわれています。定期的に大腸の検査を受けるなど、経過観察を怠らないようにしましょう。

●食生活

腸を刺激しない食生活を心がけましょう。生野菜や果物など食物繊維が多いもの、コーヒー、カレーなどの香辛料、コーラなどの炭酸飲料、アルコール、牛乳も避けましょう。

●妊娠・出産について

妊娠・出産も可能ですが、妊娠をきっかけに症状が悪化する例もあります。不安を感じる場合には医師に相談しましょう。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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