薬物性腸炎
やくぶつせいちょうえん

最終編集日:2022/4/4

概要

治療のための薬が原因でひき起こされる腸炎のことを薬物性腸炎といいます。薬によって腸管にびらんや潰瘍などの炎症が起き、腹痛、下痢や下血などの症状が生じる病気です。

原因となりやすいのは、抗生剤(抗菌薬)や胃薬、抗がん剤、経口避妊薬、非ステロイド性抗炎症剤などです。薬が腸の粘膜を直接刺激するものと、薬によって腸内細菌が変化し、炎症を起こすものがあります。一般的には、原因となった薬の使用をやめることで症状は改善します。


原因

薬物性腸炎は、ひと言でいうと薬の副作用として起こる病気です。抗生剤や胃薬、抗がん剤、経口避妊薬、非ステロイド性抗炎症剤などが原因になりやすいとされています。なかでも抗生剤によるものが多く、抗生剤起因性腸炎は、偽膜性腸炎と出血性腸炎に大きく分けられています。

●偽膜性腸炎

セフェム系やリンコマイシン系の抗生剤を服用することで腸内細菌バランスが乱れることで発症します。クロストリジウム・ディフィシルという菌が異常繁殖して毒素を産生し、腸の粘膜に炎症をひき起こすとされています。

●出血性腸炎

ペニシリン系抗生剤が何らかの原因で腸管にダメージを与えることで発症します。腸管にできたびらんが出血を起こすとされています。ペニシリン系抗生剤内服後~7日後に菌交代現象の結果、血性下痢、腹痛が生じます。便培養でクレブシエラ・オキシトカが検出されることが多いといわれています。


症状

薬物性腸炎の共通した症状は、腹痛と下痢ですが、タイプによって現れ方が違います。

●偽膜性腸炎

基礎疾患のある高齢者に多くみられます。抗生剤服用中、または服用後1~2週間後に現れる水のような下痢がおもな症状です。下痢をくり返したり、粘り気のある便が出たりしますが、血便は比較的少ないとされています。そのほか、腹痛や発熱、腹の張り、吐き気などがある場合もあります。

●出血性腸炎

比較的健康な若年者に多いとされています。ペニシリン系抗生剤を服用した数日後に突然、激しい腹痛とトマトジュースのような血便が現れます。発熱がある場合もあります。


検査・診断

問診で病歴や薬の服用状況、経過などを確認します。この際、服用している薬について正確にくわしく医師に伝えることが重要です。抗生剤を服用した後に下痢になった場合には、薬物性腸炎が疑われ、血液検査、CT検査、内視鏡検査などを行い診断します。

●偽膜性腸炎

便検査を行い、クロストリジウム・ディフィシル菌と、その毒素が検出されるかどうかを調べます。

●出血性腸炎

内視鏡検査を行い、腸の粘膜に出血がみられないかどうか、潰瘍ができていないかどうかなどを詳しく観察します。


治療

原因となっている薬の使用を中止します。症状に応じて腸の動きや痛みを抑える薬を使った対症療法を行います。絶食や点滴による治療が必要となることもあります。

●偽膜性腸炎

クロストリジウム・ディフィシル菌に効果のあるバンコマイシンやメトロニダゾールなどが使った薬物療法が行われます。

●出血性腸炎

抗生剤の中止と対症療法だけで、通常は7日程度で症状が改善するケースがほとんどです。


セルフケア

療養中

薬物性腸炎では、激しい下痢症状が現れくり返すことがあります。その際に注意しなければならないのが脱水です。こまめな水分補給を心がけましょう。食事は、食べられるようならおかゆなど消化のよいものを少量ずつとるようにしてください。

予防

薬による副作用で下痢などの症状が現れることがあることを知っておきましょう。薬を服用している間、または服用後に激しい腹痛や下痢、血便などの症状が現れ、それらがつづく場合には、できるだけ早くかかりつけの医師、または薬剤師に相談してください。薬物性腸炎はほとんどの場合、原因となっている薬の服用を中止すれば症状が改善します。ただ薬によっては、自己判断で使用を中止してはいけないものもありますので、医師、または薬剤師の指示に従うようにしましょう。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

本サービスに掲載される情報は、医師および医療専門職等の監修の元、制作しております。監修者一覧および元となる情報はこちらからご参照ください。
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