胃腸炎
いちょうえん

最終編集日:2023/3/30

概要

胃腸炎は、何らかの原因で胃や腸が炎症を起こしている状態のことです。急性と慢性に分けられ、ウイルスや細菌などが原因のものを感染性胃腸炎、ストレスや暴飲暴食、薬剤などがもとで発症するものを非感染性胃腸炎といいます。多くは急性の感染性胃腸炎で、おもに口からウイルスなどが体内に侵入し、感染すると数日以内に、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れます。健康であれば大抵は軽症ですが、乳幼児や高齢者、免疫機能が低下している人は重度の脱水症状に陥るなどして命にかかわる危険性もあります。

原因

胃腸炎の原因となるウイルスには、幅広い年齢層で感染がみられるノロウイルス、乳幼児に多いロタウイルスやアデノウイルスなどがあり、冬から春先にかけて多発します。ノロウイルスはとくに感染力が強く、保育施設や高齢者施設などでの集団感染も発生しています。

細菌によるものは大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ菌などで、夏に流行する傾向にあります。

感染経路はさまざまで以下のようなものがあります。

・ウイルスなどを口から吸い込む場合

・ウイルスが付着したドアノブやタオルなどに触れたり、感染者の嘔吐物や便などに触れたりした手指で口を触った場合

・ウイルスや細菌に汚染された食べ物や水を摂取した場合

ほかに、アニサキスなどの寄生虫によるもの、抗生物質などの薬剤によるもの、暴飲暴食や消化不良、アレルギーによるもの、精神的なストレスなど多様な原因が考えられます。


症状

おもな症状としては下痢、吐き気や嘔吐、腹痛、発熱などが挙げられ、ウイルス性は吐き気や嘔吐、細菌性は下痢の症状が強く現れることがよくあります。

急性の場合は、感染すると体内に潜伏後、突然、症状が生じます。体内での潜伏期間は菌の種類によって異なり、ウイルスの場合で数時間から数日程度です。細菌では、潜伏期間は菌の種類により異なり、サルモネラ菌、腸炎ビブリオなどの感染型では2~3日(48~72時間)、ボツリヌス菌、ブドウ球菌などの毒素型では数時間(4~8時間)といわれています。通常、数日で自然に治まることがほとんどですが、重度の脱水症状に陥ったり、けいれんや腎不全、脳症などの合併症をひき起こしたりする場合もあるため、注意が必要です。

慢性の場合は、腹痛や下痢などが慢性的に生じて、倦怠感や食欲不振などを伴う場合もあります。

検査・診断

問診により、現在の症状や、症状が出現した時期、潜伏期間を含めた食事などを細かく確認し、そのときの流行なども考慮して診断します。症状などから判断し、必要な場合は血液検査、便検査、超音波(エコー)検査、CT検査などを行います。

ウイルス性胃腸炎のなかでもノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスに対しては、迅速検査キットが診断に利用できます。細菌性胃腸炎は便培養検査で診断することができます。

治療

胃腸炎は症状を改善するための対症療法が中心となり、症状にあわせて整腸薬や吐き気止め薬、細菌性の場合は抗菌薬などを処方し、経過観察をします。また、下痢や嘔吐などによる脱水症状を防ぐために経口補水液などの摂取がすすめられます。脱水症状の進行によっては点滴を行う場合もあります。

セルフケア

療養中

下痢や嘔吐などによって脱水症状を起こさないよう、また胃腸に負担をかけないように気をつけながら、水分をきちんと補給して栄養のある食事をとることが大切です。また、症状が改善されてもしばらくは菌が体内に残っているため、タオルや食器などは自分専用のものを使い、お風呂は最後に入るなどして家族や周りの人への感染を防ぎましょう。

予防

感染性胃腸炎は手洗い、うがいをこまめに行うことが予防の基本となります。また、調理器具や食器は熱湯消毒するなどして清潔に保ち、二枚貝や魚介類、鶏肉など、胃腸炎をひき起こす可能性がある食品はしっかり加熱調理をして食べるようにしましょう。

サバ、カツオ、サンマなどの魚にアニサキスが寄生している場合には、生食すると、虫体が胃壁に入り込み、強い腹痛を認めます。アニサキスは酸に強いため、バッテラなどの酢漬けでは死滅しないので注意が必要です。加熱か、冷凍することにより虫体が死滅します。アニサキスによる腹痛が疑われる場合には内視鏡検査を行い、虫体を取り除くと痛みは改善します。

家族が感染した場合は、嘔吐物を処理するための3原則「すばやく処理する、乾燥させない、消毒する」を守り、嘔吐物に直接触れたりしないように気をつけましょう。同じタオルは使わない、嘔吐物がついた衣服などは別にして洗うといった配慮も必要です。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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