胃アトニー
いあとにー

最終編集日:2022/3/27

概要

胃下垂は上部消化管X線検査(バリウム検査)によって確認できる、“胃が骨盤内まで垂れ下がっている状態”ですが、胃アトニーはそれに加えて、胃の筋肉の緊張が緩み、胃の運動機能が低下した状態をいいます。

胃無力症とも呼ばれ、食べ物を胃から十二指腸に送る作用が低下し、食べた物が消化されず消化不良を起こします。消化しようとして胃酸の分泌が過剰となるため、胃炎を起こしやすくなります。比較的やせている女性に多くみられるのが特徴です。

原因

過労やストレス、食べすぎや飲みすぎなどで胃の運動が弱くなると、消化不良を起こしやすくなります。消化不良で胃に食べ物がたまった状態がつづき、胃が下がってしまうことで胃アトニーがひき起こされます。

ほかにも生まれつき筋力が弱い人、腹部の手術を受けた人や出産回数の多い人も胃アトニーになりやすいとされています。甲状腺機能低下症や脳下垂体不全などの病気をきっかけに発症することもあります。

健康で胃の周りの筋肉が十分ある人でも、極端に食事量を減らしたダイエットをつづけると胃アトニーになってしまう危険性があるので注意が必要です。

(左)正常な胃と(右)胃アトニー
(左)正常な胃と(右)胃アトニー

症状

消化不良に伴って起こる、胃もたれや胃痛、げっぷ、食欲不振などの症状がみられます。腹が張った感じや吐き気、嘔吐が現れる場合もあります。また、めまいや頭痛、全身の倦怠感など、自律神経失調症の症状を訴えることもあります。

検査・診断

問診で症状やこれまでの病歴などを聞きとります。診断は、上部消化管胃内視鏡検査(胃カメラ)、バリウム検査で確定できます。

また胃がんや胃潰瘍などほかの病気がないかを胃内視鏡検査や血液検査などで確認します。

治療

まずは生活習慣を見直すことが必要です。睡眠不足やストレスを解消し、生活リズムを整える指導と食事指導などが行われます。1日の食事回数を細かく分けたり、消化しやすいたんぱく質を多くとったりするなどの方法があります。

並行して胃の運動機能を高める薬や胃の消化を助ける薬、胃酸の分泌を抑える薬などを症状に応じて服用します。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染が原因となっている場合もあるため、ピロリ菌の除菌治療を行うこともあります。

適度な運動や腹筋を鍛えて全身の骨格バランスを整えることで症状が改善することもあるため、運動療法も行われます。

セルフケア

療養中

胃アトニーは、適度な運動や生活習慣を見直すことで症状の改善が見込めます。運動は、腹筋など胃周辺の筋力を強くしたり、体重を増やしたりすることで、垂れ下がってしまった胃を元の位置に戻し、胃の機能を高めることができます。

また、日常の生活リズムを整えることも大切です。睡眠は十分にとり、精神的にリラックスするように心がけましょう。食べすぎや飲みすぎは厳禁です。1回の食事量は少なくして、その分を間食で補ったり、食事の回数を増やしたりします。胃から十二指腸に食べ物が送られるのを早めるために、食後30分程度、からだの右側を下にして横になるのも有効とされています。

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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