胃切除後症候群
いせつじょごしょうこうぐん

最終編集日:2022/3/31

概要

胃の切除手術の後に起こるさまざまな障害を総称して、胃切除後症候群と呼びます。

胃は食べ物を貯蔵し、蠕動運動により消化する役割を果たしている臓器ですが、それを切除するとその機能が失われ、ダンピング症候群、晩期低血糖、貧血などさまざまな症状が現れます。それ以外にも逆流性食道炎や下痢、胃切除後胆石、骨粗鬆症などが起こることがあります。


原因

胃の切除により胃の消化機能などが損なわれることで起こります。胃をどのくらい切除したのか、どこを切除したのかによって現れる症状は異なります。

逆流性食道炎は、胃の入り口である噴門部を切除したことによって、食べ物が食道に逆流しやすくなることで起こります。ダンピング症候群が起こるのは、胃の出口側にある幽門部を切除したため、胃のなかに食べ物をためておく機能が低下したからです。本来ならば胃のなかに食べ物をためて少しずつ小腸に送り出すのですが、その機能が消失し小腸に一気に流れ込んでしまうことが原因です。貧血の症状が現れる人も少なくありません。これは胃を切除したことによって、造血に必要なビタミンB12を吸収することができなくなったことが原因です。


症状

胃切除後症候群には、ダンピング症候群、逆流性食道炎、貧血、下痢、栄養障害、胃切除後胆石、骨粗鬆症などがあり、切除した胃の範囲や場所によって現れるものが異なります。胃もたれや吐き気、嘔吐、腹痛などの症状は全般的にみられます。

●早期ダンピング症候群・後期ダンピング症候群の症状

・早期ダンピング症候群

食後すぐに起こる、動悸、めまい、しびれ、顔面紅潮、倦怠感などの全身症状と、腹痛や下痢、吐き気、嘔吐などの腹部症状

・後期ダンピング症候群

食後2~3時間してからのめまい、頭痛、倦怠感、発汗など

●逆流性食道炎の症状

食後の胸やけ、胃もたれ、みぞおちの痛みなど

●貧血の症状

めまい、動悸、息切れ、倦怠感など


検査・診断

胃の切除後の経過を観察するとともに、食後に特定の症状がみられるかどうかで判断します。また、体重減少の有無、栄養状態、食事はとれているかなどについても確認します。貧血が疑われる場合は、必要に応じて血液検査を行います。

治療

症状をとり除くための薬による治療に加えて、食事のとり方や食後の過ごし方などを中心とした生活指導が行われます。

胃の切除後は、一度にたくさんの量を食べることがむずかしくなります。胃の機能が失われているため、十分に摂取できない栄養素も出てきます。そのため、鉄分やビタミンが不足している場合には注射や内服薬を用いた治療を行います。



セルフケア

病後

胃を切除する前と後では食事のとり方が違って当然です。基本的に食べてはいけないものはありませんが、一度に食べられる量や食べ方を工夫しながら、自分に合う食べ方を見つけましょう。

一般的には、一日三食という考え方をなくして、少量ずつ回数を増やしてとるようにします。ゆっくり時間をかけて食べることも大事です。よくかんで食べることで消化を助けることができます

食後にダンピング症状が現れる場合は、症状が起きそうだと感じたら、すぐにあめなどをなめることで対処できます。症状が出たら無理はせず、横になって休むようにしましょう。

逆流性食道炎の症状が現れる場合は、食後、すぐに横にならないようにします。また就寝する3時間前からは何も食べないことで、食べ物の逆流を防ぐことができます。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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