機能性ディスペプシアきのうせいでぃすぺぷしあ
最終編集日:2022/3/26
概要
「ディスペプシア」とはギリシャ語に由来する「消化が悪い」ことを意味する言葉です。病気において「機能性」という言葉を使う場合には、変形する、傷がつくなどの異常がないにもかかわらず何らかの症状が現れていることを示しています。つまり「機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia)」とは、内視鏡検査などを行っても病変がみつからないにもかかわらず、食後の胃もたれ、膨満感、胃の不快感などの症状がつづいている状態のことをいいます。以前は胃酸過多、胃下垂、神経性胃炎などと呼ばれていたこともありました。
近年こうした症状を訴える人は増加していて、症状がつづいていてもその原因となる病気がないケースでは、胃の炎症の有無にかかわらず「機能性ディスペプシア」と診断されます。原因不明の症状が常に現れているため、患者さんにとってはQOL(生活の質)を大きく低下させる要因となります。
原因
一般の検査では異常はみつからないため、はっきりとした原因は不明です。
消化管の運動異常、精神的要因やストレス、胃酸分泌異常と酸に対する感受性、細菌やウイルスの感染、遺伝子感受性などが原因ではないかと考えられています。
症状
胃の痛みやもたれ、不快感、膨満感、胸やけ、吐き気、げっぷなどがおもな症状です。こうした症状が慢性的につづき、一般の検査などでは症状の原因がわからない場合に機能性ディスペプシアと診断されます。
検査・診断
胃もたれや不快感、胸やけなどの症状が慢性的につづき、検査などでは原因がわからない場合に機能性ディスペプシアと診断されます。
ただし、こうした症状が現れるほかの病気、例えば胃・十二指腸潰瘍、胃がん、膵臓がん、胆嚢がんなどではないことを確認したうえで診断することがとても重要です。そのため、血液検査、X線検査、内視鏡検査、超音波検査などを行うことがあります。
治療
一般に機能性ディスペプシアでは、食事や生活習慣の改善指導と薬による治療が同時に行われます。食習慣、嗜好品については、過食、偏食、高脂肪食、過度の飲酒、喫煙などを改善し、生活習慣では過労や過度なストレス、不眠などを少しでも減らすセルフケアが求められます。
薬による治療では、ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などの胃酸分泌抑制薬、ドパミンD2受容体拮抗薬、コリンエステラーゼ阻害薬などの消化管運動機能改善薬が使われます。ほかにも症状にあわせて、漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬などが使われることがあります。
セルフケア
予防
機能性ディスペプシアは命にかかわる病気ではありませんが、QOLを大きく低下させる傾向の強い病気です。ひとりで悩まず、まずは医療機関で診察を受けることが大切です。ほかの病気が除外され機能性ディスペプシアの診断がつけば、適切な治療を受けることができます。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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