手足口病てあしくちびょう
最終編集日:2022/2/19
概要
ウイルスに感染することで、口の中や手足などに水疱状の発疹が現れる病気が手足口病です。罹患しやすいのは1〜6歳で、とくに1歳をピークに3歳までの患者さんが70〜80%を占めます。
流行する時期は夏が中心ですが、秋から冬にかけて感染者が増加したこともあります。
ほとんどの患者さんは軽症で治癒しますが、時に髄膜炎を合併したり、脳炎などの重い合併症を起こす場合もあります。
感染症法で五類感染症に定められていて、小児科の定点医療機関から毎週患者数が報告されます。
原因
おもな原因ウイルスは、コクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)などですが、他のエンテロウイルス属のウイルスが原因となることもあります。
感染者のせきやくしゃみで周囲に飛び散るウイルスを浴びて起こる飛沫感染、手についたウイルスによる接触感染、便に排出されたウイルスによる糞口感染がおもな感染経路です。
治癒後もしばらくの間、便にウイルスが排出されます。また無症状の感染者がウイルスを排出しているケースもあるので注意が必要です。子どもが集団で生活する学校や施設などで感染が広がりやすい病気です。
症状
2〜7日の潜伏期間後、手や足、口に水疱や丘疹が現れます。ひじやひざ、お尻に出ることもあります。患者さんの1/3程度で発熱を認めますが、38℃以下のことが多いです。
口内の水疱は痛みを伴いますが、手や足の発疹も含めて、ほとんどの場合1週間ほどで消失します。
通常はとくに心配する病気ではありませんが、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの重い症状が出ることがあります。とくにエンテロウイルス71(EV71)に感染した場合は、ほかのウイルスによる手足口病と比べて神経系の合併症をひき起こす割合が高いといわれています。
検査・診断
問診や視診、触診と周囲での流行状況も参考にして診断を行います。症状が重くなければ、臨床の現場で検査を行うことはあまりありません。
原因ウイルスを確定診断するためには、咽頭ぬぐい液、血液、便などを採取してウイルスの分離・検出を行う必要があります。
治療
現在、手足口病の原因となるウイルスに効果のある薬はありません。経過観察をしながら、痛みやかゆみなどの症状が強い場合には対症療法が行われることもあります。口内の痛みで食事や水分がとれない場合もあるので、特に年少児では脱水に注意が必要です。
重症化するケースが多いわけではありませんが、38℃以上の高熱が続く、頻繁に嘔吐する、 呼吸が速く苦しそう、水分がとれずおしっこが出ない、ぐったりしている、などの症状が現れた場合は、すぐに医師の診察を受ける必要があります。
セルフケア
予防
一般には、接触感染を予防するために手洗いをしっかりと行うことと、糞口感染を防ぐために排泄物を適切に処理することが家庭内での感染予防につながります。手洗いは流水と石けんで十分に行います。また、タオルの共用をしてはいけません。
監修
川崎医科大学 小児科学教授
中野貴司
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