腱鞘炎
けんしょうえん

最終編集日:2024/6/8

概要

「腱」は骨と筋肉をつなぐひも状の組織で、「腱鞘(けんしょう)」は所々で腱を骨に固定するトンネル状の組織です。腱はトンネル(腱鞘)のなかで、骨から離れることなく自由に動くことができます。腱と腱鞘に炎症が起こる病気が「腱鞘炎」です。腱鞘が肥厚したり硬くなったりして、あるいは腱の肥厚によって腱と腱鞘の間に過剰な摩擦が起こり、炎症を発症します。

腱と腱鞘は全身に分布しますが、腱鞘炎は、小さな骨が多く存在していて、細かい作業を頻繁に行う手首や手指にもっとも多く起こります。手の腱鞘炎には、指に腱鞘炎が起こる「ばね指(弾発指)」、手首の親指側にある腱と腱鞘に炎症が起こる「ドケルバン病」などがあります。ドケルバン病は妊娠・出産期、閉経後の女性に好発します。ここでは手指と手関節の腱鞘炎について説明します。

原因

例えば、パソコンなどのキーボード作業、スマートフォンの長時間使用、楽器演奏、文字を書く、テニスや野球などのスポーツで、手首や手指を使いすぎることによって炎症が起こります。また、女性は閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで腱や腱鞘の柔軟性が低下し、炎症が起こりやすくなります。加齢、糖尿病、関節リウマチ、人工透析治療などもリスク要因として挙げられます。

症状

炎症を起こした部位に、痛みや腫れがみられます。手指を使いにくい、動かしにくい、曲げ伸ばしがしにくい、特定の動作ができないなどが現れます。よく耳にする訴えとして、ペットボトルのふたが開けられない、物をつまめない、ドアノブを回せないなどがあります。

ばね指では、曲げていた指を伸ばすときにひっかかる感じがする、ばねのように突然伸びる、指の付け根が硬く、押すと痛いなどの症状が起こります。朝にもっとも症状が強く現れます。

ドケルバン病では、手首の親指側の痛み・腫れ、親指を広げられない、動かすと痛むなどが現れます。

検査・診断

問診と視診、触診で、痛む部位の特定、伸展制限や屈曲制限、症状の強さなどを確認します。X線検査や超音波(エコー)検査、とくに「エラストグラフィー」と呼ばれる、組織の硬くなった部分を調べる検査が行われることもあります。

ドケルバン病では、痛みの誘発テストである「フィンケルシュタインテスト」を行います。親指を中に握り込んだ拳(こぶし)をつくり、小指のほうに手首を曲げて痛みが起これば陽性となります。

治療

炎症が起きている場所の安静が第一です。安静を保つのが難しい場合は、シーネ(添え木)固定などで装具固定をします。ただし、ばね指では安静にしすぎると関節が固まって動かしにくくなるため、固定はせず、指の伸展ストレッチを行うことも必要とされています。

痛みが強い場合はステロイドの腱鞘内注射を行います。薬剤が皮下に漏れるのを防ぐために、超音波画像を見ながら挿入する場合もあります。

これらの保存療法で効果がみられなければ、手術を考慮します。腱鞘切開術は、腱を包む腱鞘を切開することで腱と腱鞘の摩擦を解除し、炎症が起こらないようにします。

なお、出産後に起きたドケルバン病は授乳が終わると自然に軽快することもあるため、保存療法で様子をみて、授乳終了後も症状が治まらない場合に手術を検討します。

セルフケア

予防

手や手指の使いすぎを起こさないために、キーボード作業やスマホの操作を長時間続けることは控え、1時間に1回程度、ストレッチをするなどを心がけましょう。また、手首や手指に負担の少ない作業環境にすることも大切です。サポーターやクッションなど、予防のためのグッズを用いるのもよいでしょう。

監修

東馬込しば整形外科 院長

柴 伸昌

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