圧迫骨折・脊椎圧迫骨折あっぱくこっせつ・せきついあっぱくこっせつ
最終編集日:2024/6/11
概要
圧迫骨折は、脊椎(背骨・脊柱)を構成する椎骨(ついこつ)の腹側の部分である「椎体」が、垂直方向の圧迫を受けて潰れてしまう状態を指します。かつては転落のような強い外力が加わる事故によるものが多かったものの、高齢化が進んだ現在では、骨粗鬆症に伴い強い外力がなく発症するものが増えています。
60歳以上で増加し、女性の頻度が高くなっています。
原因
骨粗鬆症によって骨がもろくなっていることが原因となります。転倒や尻もちなどがきっかけとなりますが、骨粗鬆症が進行していると、くしゃみや、重い物を持ち上げただけで骨折することもあります。また、原因となる行動が不明な場合もあります。
若い世代では転倒や落下、交通事故などで脊椎に垂直に強い力が加わることで起こります。
症状
背中(骨折部周辺)や腰臀部の痛みがおもな症状です。起床時や寝返りをしたときなど、からだを動かしたときに痛みが強く出ます。動作がスムーズにできない、身長が縮んだ、背中や腰が曲がったなどの症状もみられます。
潰れた椎体が脊髄の神経を圧迫すると、下肢のしびれや痛み、麻痺が現れることがあります。しかし、圧迫骨折では症状が現れないことも多く、骨折を起こしていても気づかないケースも少なくありません。
検査・診断
問診によって症状の確認を行い、X線検査、CT・MRI検査などの画像検査で骨折部位を特定し、骨や周囲の状態をみます。原因として骨粗鬆症が疑われる場合には、身長測定、骨密度検査、血液と尿による「骨代謝マーカー」検査などを行います。
骨折の評価には「椎体骨折評価基準」が用いられます。骨のもろさをきたす骨軟化症や、多発性骨髄腫、副甲状腺機能亢進症、がんの脊椎への転移、脊椎の感染症などとの鑑別が必要です。
治療
●保存療法
安静を保ち、コルセットを用いて脊椎への負担を軽くします。骨折が軽度の場合は安静を保つことで、1カ月ほどで改善されます。
骨粗鬆症が原因の場合は、ビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症の薬を用います。痛みが強い場合は、鎮痛薬も投与されます。
痛みが治まったら、理学療法によって脊椎周辺の筋肉を鍛える・正しい歩行の仕方や物の持ち上げ方などを体得するリハビリテーションを行います。
●手術
保存療法で効果が見込めない場合には、手術が行われます。
「セメント充填療法」は、骨セメントと呼ばれる硬化剤を圧迫骨折が起きた椎体内に注入して、骨を補強します。椎体内に直接セメントを注入する経皮的椎体形成術や、骨セメントを入れる前にバルーンを使ってセメントを入れるスペースをつく方法(バルーン・カイフォプラスティー:BKP)や椎体の整復を目指しセメントに加えて椎体内にステント(金網)を挿入する方法(VBS:経皮的椎体ステント形成術)があります。
椎体へのセメント注入が適応にならないケースでは、骨折した部分に金属を埋め込んで上下の骨を固定する「椎体固定術」が行われます。
手術の後は、リハビリテーションで筋肉をつけ、からだのバランスを取り戻します。
セルフケア
予防
1つの椎体が圧迫骨折を起こすと、別の椎体も圧迫骨折を起こしやすくなります。複数の圧迫骨折は腰や背中が曲がるなどの姿勢の変化を招き、からだのバランスが崩れてしまいます。その結果、転倒し、ほかの部位の骨折を起こして寝たきりになるなどのリスクが高くなります。60代以降に次のような症状があったら、脊椎の圧迫骨折を疑い、整形外科での検査を受けるようにしましょう。
・身長が縮んだ。
・背中や腰が曲がってきた。
・壁に背中・かかとをつけてまっすぐ立てなくなった。
・寝返りや起き上がりがしにくくなった。
監修
東馬込しば整形外科院長
柴伸昌
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