副甲状腺機能亢進症ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう
最終編集日:2023/3/22
概要
副甲状腺は通常、甲状腺の背中側の上下左右に4個存在する米粒大の小さな臓器です。通常は上下左右に2個ずつ、計4個ありますが、人によって個数が変わり、約15%は5個あるといわれます。副甲状腺は「上皮小体」とも呼ばれ、甲状腺とは別の臓器で、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌しています。PTHのおもな役割は血液中のカルシウム濃度を維持することです。PTHは骨からの骨吸収と、腎臓からのカルシウム再吸収を促進したり、ビタミンDの活性化を介して腸管からのカルシウム吸収を促進します。また、腎臓からのリンの再吸収を抑制して血中のリンの濃度を低下させます。
副甲状腺機能亢進症はPTHが過剰に分泌される病気です。副甲状腺に原因がある場合を「原発性副甲状腺機能亢進症」、ほかの病気が原因になって起こるものを「二次性副甲状腺機能亢進症」と呼びます。
原発性は①副甲状腺のひとつが腫れて「腺腫」と呼ばれる状態になるもの(約80%)、②複数が大きくなる「過形成」(約20%)がありますが、腺腫も過形成も良性です。がん化する悪性のものもありますが、1%未満とまれです。
原因
原発性副甲状腺機能亢進症には遺伝が関与するものもあり、家族性の場合は、副甲状腺の複数が大きくなる場合が多くなります。しかし、多数は原因が明らかになっていません。
二次性副甲状腺機能亢進症の原因疾患としてもっとも多いのが、慢性腎臓病(CKD)、腎不全です。人工透析を受けている人に好発します。そのほか、ビタミンD欠乏症や、くる病(骨軟化症)、消化器の術後、慢性膵炎などでも起こります。
症状
症状は多彩であり、腎臓の石灰化、尿路結石、骨粗鬆症のほかに、食欲不振、嘔吐、便秘、筋力の低下、頭痛、倦怠感、イライラ、不眠、消化性潰瘍による痛み、体重減少などの「高カルシウム血症」の症状が現れます。軽症ではほとんど自覚症状はないものの、尿路結石のリスクや骨量減少からの骨折リスクも増加します。結石の症状として腰や腹、背中の疼痛、血尿がみられます。さらに進行すると、骨折しやすい、身長が低くなるなどの骨の変化を現す症状が起きてきます。
検査・診断
血液検査と尿検査で、血中と尿中のカルシウム濃度、血中のPTHの値を調べて確定診断します。
どの副甲状腺に異常があるかを、超音波(エコー)検査、アイソトープ検査(99mTc-MIBIシンチグラフィ)で精査します。そのほか、頸部CT、縦隔CT、MRI検査などを行うこともあります。また、CKDによる二次性副甲状腺機能亢進症では高リン血症を現すため、血中のリンの値も検査します。
治療
原発性副甲状腺機能亢進症の治療は、病的副甲状腺の摘出である副甲状腺摘出術(PTx)が第一選択になります。手術困難な場合には内科的な治療が行われます。症状がない場合でも、血清カルシウム値の基準値(8.4~10.2mg/dL)よりも1mg/dL以上高い、尿中カルシウム排泄が400mg/dL以上、推算糸球体ろ過量が60mL分未満などであれば、PTxがすすめられます。
PTHの分泌を抑制するカルシミメティクス(カルシウム感知受容体作動薬)を用いる薬物療法もありますが、効果が持続しにくいため、手術が可能であれば根治療法として手術がすすめられています。なお、骨量の減少に対する対症療法としてビスホスホネート製剤などの骨吸収抑制薬を併用することもあります。
二次性副甲状腺機能亢進症では、原因疾患の治療と並行して、高カルシウム血症や高リン血症の治療が行われます。CKDや腎不全では「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」に基づき、ビタミンD製剤やシナカルセトなどのカルシウム感知受容体作動薬が投与されます。薬剤の効果がない、あるいは副作用で服用をつづけられない場合には、PTxが考慮されます。
複数の副甲状腺が大きくなる過形成で、副甲状腺の場所が特定できない場合は、検査で異常のある副甲状腺をすべて見つけ出すことが不可能な場合もあります。また、PTx後にほかの場所の副甲状腺が腫れて再発するケースもあります。このようなケースでは、再手術が必要になることもあります。
監修
医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長
富田益臣
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