骨軟化症(くる病)こつなんかしょう・くるびょう
最終編集日:2024/6/22
概要
硬い骨をつくる過程では骨は石灰化されることが必要ですが、骨軟化症(くる病)では、何らかの原因でこの過程に障害が起こり、本来石灰化することで正常な骨となる類骨が石灰化されずに蓄積されてしまいます。このような骨組織の変化が成人してから発症する場合を「骨軟化症」、骨の成長過程にある小児期での発症を「くる病」と呼びます。骨軟化症では骨の変形や骨折が、くる病ではそのほか関節変形などが生じやすくなります。
骨の代謝にはビタミンD、リン、カルシウムなどが必要で、このうちのどれが不足して引き起こされるかによって、ビタミンD欠乏性、ビタミンD 抵抗性、低リン血症性など、いくつかのタイプに分類されています。
原因
骨石灰化にかかわるビタミンD、カルシウム、リンなどの取り込みや活性化がうまくできないことで起こります。
●ビタミンD欠乏性骨軟化症(くる病)
カルシウムやリンの吸収を促すビタミンDが不足して起こります。日光に当たらないこと、食事からのビタミンD摂取が不足していること、胃切除後の胆汁分泌不全などが原因となります。ビタミンD欠乏性くる病では、母親が極度に日光を浴びなかったことや完全母乳栄養、極端なアレルゲン除去食などの既往が高リスクとされています。
なお、遺伝性要因のあるものをビタミンD依存性と呼び、この場合は腎臓などでビタミンDを活性化する働きや、各組織でのビタミンD受容体(ビタミンDを受け取る)の働きの低下、ビタミンDの活性化に必要な酵素の不足などが原因であることがわかっています。
●低リン血症性(ビタミンD抵抗性)骨軟化症(くる病)
消化管におけるリンの吸収障害、腎疾患や薬の副作用で発症するものがあります。そのほか、遺伝子異常が原因で、血中のリン濃度を低下させる働きをもつFGF23(リン利尿因子)というホルモンが過剰に産生され、低リン血症が起こることがあります。
また、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーによって極端な食事制限を行うことで、ビタミンD、カルシウム、リンが不足し骨軟化症につながるケースもあるといわれています。
症状
初期には関節痛や腰痛、背中の痛み、骨の痛みや圧痛(押すと痛む)、叩打痛(骨を軽くたたいても痛む)などがみられます。筋力が低下するのも特徴で、階段の昇降ができない、歩行困難、しゃがんだら立ち上がれない、などがみられます。
小児では歯の発育の悪さや成長障害も顕著になってきます。骨の変形によって、鳩胸や脊柱の側彎・後彎、O脚・X脚なども起きてきます。
また、カルシウムやリンの不足によって、骨や筋肉の症状以外に、けいれんやテタニー(筋肉の硬直)、呼吸不全などが起こります。
検査・診断
問診による症状の確認、X線検査、血液検査、骨シンチグラフィなどが行われます。
以下のような項目に当てはまるかどうかが診断基準とされています。
●骨軟化症
低リン血症または低カルシウム血症、高BAP血症、筋力の低下あるいは骨の痛みがある、骨密度が若年成人平均値の80%未満、骨シンチグラフィやX線画像での特徴的な異常があるもの。
BAP(血清中の骨型アルカリホスファターゼ)は骨芽細胞という骨をつくる細胞に多く存在します。骨組織に何らかの異常があると、血液中に出てきてしまうため血清中の値が高くなります。高値を示す場合、骨をつくる機能が低下していることを意味します。
ほかの骨の変形を伴う骨疾患や骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、強直性脊椎炎、神経疾患による筋力の低下、腫瘍の骨転移などとの鑑別が行われます。
●くる病
画像検査で特徴的な変形を認める、BAP値が高い、血液検査で低リン血症または低カルシウム血症がある、臨床症状(O脚・X脚、脊柱の弯曲、頭蓋骨の大泉門の開離、頭蓋骨のへこみ、関節の腫れ、肋骨の変形)を満たすもの。
治療
タイプや症状、病状に応じて、ビタミンD製剤、リン製剤、カルシウム製剤の投与を行います。積極的に日光に当たる、カルシウム・ビタミンDを多く含む食材を摂取するなど、生活習慣の改善も必要です。ビタミンD抵抗性や依存性では通常の天然型ビタミンDは無効で、活性型ビタミンDの投与が必要となります。骨軟化症の骨の変形に対して骨矯正術、低身長を伴う場合には骨延長術などの手術が検討されます。
セルフケア
予防
くる病の予防には、妊娠中からビタミンDを多く含む食材を積極的にとること、日光浴を行うことがすすめられます。また、母乳はビタミンDを多く含まないため、粉ミルクや液体ミルクを適切に与えることも必要です。
ダイエットやアレルギーによる極端な食事制限、夜型生活などでの極端な日光浴不足を続けると、骨軟化症につながりかねません。生活の見直しも大切です。なお、遺伝的な要因の強いビタミンD依存性、低リン血症性は、国の指定難病となっています。
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴伸昌
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