低血糖症ていけっとうしょう
最終編集日:2022/4/1
概要
からだのなかで、血液中のブドウ糖濃度(血糖)は常に一定の幅に調整されていますが、糖の調節にかかわるホルモンの分泌や作用が障害されると低血糖が生じます。ブドウ糖の濃度が何mg/dL以下の場合を低血糖と呼ぶかは、定義によって異なるため、一定の基準はありません。しかし、静脈血液中のブドウ糖濃度が45~60mg/dLであれば低血糖が示唆され、45mg/dL以下であれば何らかの病気を疑います。低血糖は、高血糖同様にからだや生活にさまざまな支障をきたします。
また、糖尿病を患っていないにもかかわらず、炭水化物を摂取した後、約4時間以内に低血糖状態が起こる食後低血糖(反応性低血糖)と呼ばれるものもあります。
原因
低血糖症の原因として、インスリン注射や糖尿病の治療薬によるインスリンの過剰分泌、肝不全や腎不全、敗血症などの重篤な疾患、血糖値を上昇させるグルカゴンやコルチゾールなどのホルモンの欠乏、自分自身のインスリンが過剰に分泌されている高インスリン状態が考えられます。インスリンの過剰分泌の原因は、胃切除などの手術や、インスリンを過剰分泌する腫瘍(インスリノーマ)が原因の場合もあります。空腹時に低血糖の症状が現れ、検査を行い、血中インスリンとC-ペプチド(膵臓でつくられたインスリン量を反映する物質)の低下が不十分であれば、インスリノーマの可能性が考えられます。
症状
低血糖症による症状は、2つに分けられます。脳などの中枢神経のエネルギー源であるブドウ糖の欠乏症状と自律神経症状です。前者には、行動異常、人格変化、脱力、意識障害などを含みます。後者は血糖の低下を感知して自律神経が興奮して生じるもので、動悸や脈が速くなり、冷感、皮膚蒼白などが生じます。
検査・診断
低血糖症の検査は、まず血糖値の測定を行います。血糖値は通常70㎎/dL以上に保たれています。60~70mg/dL未満では、動悸や発汗、手や指のふるえ、脈がはやくなるなどの交感神経症状が現れます。50mg/dL程度になると、頭痛や集中力の低下などの中枢神経症状が出現し、50mg/dL 以下になるとさらに重篤となり、30mg/dLに至るとけいれんを起こしたり意識を失うなどの危険な状態になることがあります。
低血糖症の原因疾患を識別する検査では、糖尿病の治療薬の量を減らしたり、投与の中止を行ってみたりして、症状が改善されるかをみます。食後低血糖は、75g経口ブドウ糖負荷試験や食事負荷試験により血糖値とインスリン反応を調べ、診断します。
治療
低血糖症の治療は原因に応じて行います。糖尿病によるものでは、血糖降下薬やインスリン注射による体内インスリン量の過多、あるいは食事量が少ない、運動量が多い場合に起こります。このときは薬の服用中止や、服用量の減量、食事のとれない時間や運動後に適切な糖分補給を行います。
インスリノーマなどの病気が原因の場合は、原因となっている病気に対する治療を行います。
セルフケア
予防
低血糖症は、糖尿病治療のためにインスリンや血糖値を下げる薬を使用している場合にも現れる症状であり、糖尿病治療を行っている人で低血糖症の症状がある場合には、治療の見直しが必要かもしれません。
糖尿病ではない人で、腹がすくと無性にイライラしたり、手足がふるえてきたり、食後に異常な眠気に襲われたりする、といった症状に覚えがある人は低血糖症の可能性があります。早めに受診しましょう。
監修
医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長
富田益臣
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