1型糖尿病
いちがたとうにょうびょう

最終編集日:2025/12/18

概要

糖尿病は、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)が高くなる病気です。ブドウ糖を細胞に取り込むために必要なホルモンがインスリンで、インスリンが不足したり作用しにくくなると血糖値が上昇します。

1型糖尿病は、自己免疫反応により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌できなくなる病気で、自己免疫性と特発性に分類されます。また発症様式から、急性発症型、緩徐進行型、劇症型があり、進行のスピードが異なります。

生活習慣が主因の2型糖尿病とは異なり、糖尿病全体の5%未満と比較的まれですが、若年者から成人まで、幅広い年代で発症します。

原因

β細胞が破壊される明確な原因は不明ですが、自己免疫の関与が強く示唆されます。家族内に自己免疫疾患を有することが多いという報告もあり、遺伝的背景も影響していると考えられています。また、ウイルス感染、腸内環境、ビタミンD欠乏などの環境要因が発症に関連する可能性が指摘されていますが、確立した因果関係があるわけではありません。母乳栄養や衛生仮説などの話題もありますが、エビデンスは限定的です。

症状

血糖値が高くなると、体は脱水と判断し、水分をとることで血糖値を下げようとします。そのため強い口渇、多飲、多尿が起こります。

尿に糖が出るため尿が泡立ちやすくなり、また体重減少や疲労感、倦怠感などが現れます。

インスリン欠乏が急速に進むと、ケトアシドーシスを起こし、腹痛、嘔気、意識障害などが生じることがあります。

検査・診断

尿検査(尿糖、ケトン体)、血液検査(血糖値、HbA1c)で全身の状態を評価します。さらに内因性のインスリン分泌能を評価するCペプチド測定や自己抗体 (抗GAD抗体・抗IA-2抗体など)を測定し、1型糖尿病の診断を行います。

※抗体陰性でも1型糖尿病であることもあり、経過で判断します。

治療

1型糖尿病の場合、インスリン治療(インスリンの皮下注射)が必須です。1日のうちで毎食前と就寝前の計4回注射する強化インスリン療法またはインスリンポンプ療法(CSII)が一般的です。近年は、持続グルコース測定(CGM)など、糖尿病の治療はどんどん進歩しています。膵島(すいとう)移植は一部の患者に有効な治療法ですが、ドナー不足や免疫抑制の必要があります。

セルフケア

療養中

1型糖尿病の食事については、過度の制限ではなく健康的でバランスのよい食事が基本です。成長期の子供では特に十分なエネルギー摂取が必要です。

炭水化物の量・種類に応じて、インスリン量を調節する「カーボカウント」が有用であり、医師、管理栄養士と相談しながら、自分の食生活に合わせた調節を行います。

特に注意が必要なのは、甘いジュースなどの糖分を多く含んだ飲み物です。低血糖の緊急措置として飲むのは問題ありませんが、急激に血糖値が上がりやすいため注意が必要です。アルコールの摂取についても適量であれば制限はとくにありませんが、低血糖への反応が低下したりするので注意が必要です。

運動は推奨されますが、低血糖を防ぐための補食や、インスリン量の調節を適切に行うことが大切です。


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監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣