1型糖尿病
いちがたとうにょうびょう

最終編集日:2022/1/11

概要

糖尿病は、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)が高い状態になる病気です。食事などで摂取された糖質は、ブドウ糖に分解され血液中に吸収されます。ブドウ糖はいろいろな臓器や組織でエネルギーとして使われますが、そのために必要なホルモンがインスリンです。インスリンが不足したり、効きが悪い(インスリン抵抗性が高い)と、使われなかったブドウ糖が血液中にあふれ、この状態がつづくと糖尿病を発症します。

1型糖尿病は、自己免疫によりインスリンをつくりだすβ細胞が破壊されて、インスリンがほとんど分泌できない状態になってしまう病気です。生活習慣が大きくかかわる2型糖尿病とは原因が異なります。

糖尿病全体の約5%以下といわれ、おもに子どもなど若年世代で発症します。

原因

β細胞が破壊される要因は不明で、自己免疫によるものと考えられています。また、新しい研究では、1型糖尿病は自己免疫性の病気が多い家族にしばしばみられるという報告もあります。さらに日光不足によるビタミンDの欠乏、清潔すぎる生活習慣が1型糖尿病発症に関与しているのではないかという疑惑のほか、母乳哺育には1型糖尿病の予防効果に期待が寄せられています。

症状

血糖値が高くなると、脳は脱水症状であると判断し、水分をとって血糖値を下げようとします。そのため激しいのどの渇きを感じるようになります。多飲にともない、頻尿、多尿がおこります。

排泄した尿のなかには糖やたんぱく質が多く含まれているため、尿が泡立ちやすくなります。また、正常の人であれば食事に含まれるブドウ糖は体内に取り込まれますが、糖尿病になるとブドウ糖は吸収されずに尿で体外に出てしまうため、カロリー不足になって体重は減ってきます。食事をとったにもかかわらず空腹を感じ、食後に眠気やだるさを感じます。

検査・診断

1型糖尿病の検査には尿検査(尿のなかの糖分やケトン体の量を調べる)、血液検査(糖尿病の進行状況を調べる)があります。

さらに、血糖値、インスリンの分泌量、HbA1cの値、自己抗体(抗GAD抗体・抗IA-2抗体など)などを測定し、診断します。

治療

1型糖尿病の場合、インスリン治療(インスリンの皮下注射)が必須です。多くの方が1日のうちで毎食前と就寝前の計4回行います。このインスリン注射は生涯必要になりますが、合併症がないかぎり日常生活の制限はほとんどなく、日常生活にインスリン治療を組み合わせることが重要となります。またインスリンポンプ療法、血糖持続測定など、糖尿病の治療はどんどん進歩しています。特に最新の治療法では、膵島(すいとう)移植があります。これは、ドナー(臓器提供者)の膵臓から採取した膵島(ランゲルハンス島)を点滴で肝臓に移植するという方法で、移植といってもからだを切ることなく行えるので、負担が少ない有用な治療法のひとつと考えられています。

セルフケア

療養中

1型糖尿病の食事については、肥満にならないような健康的な食生活であれば、特別な食事制限は不要です。とくに成長期の子どもの場合、一日三食きちんととり、適量ならおやつもがまんせず食べたほうがよいでしょう。食事内容については、炭水化物、脂質、たんぱく質など食事の構成成分をよく把握しながら、インスリンの投与量を医師や管理栄養士と相談しながら調節していきます。

唯一注意する点は、甘いジュースなどの糖分を多く含んだ飲み物です。低血糖の緊急措置として飲むのは問題ありませんが、急激に血糖値が上がりやすいため、注意が必要です。アルコールの摂取についても適量であれば制限はとくにありませんが、低血糖への反応が低下したりするので注意が必要です。

運動については、これもとくに制限はありませんが、運動すると血糖値は下がりますから、低血糖の予防対策を整えておくことが大切です。

監修

医療法人青泉会下北沢病院糖尿病センター長

富田益臣

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