痔瘻(あな痔)じろう・あなじ
最終編集日:2022/4/6
概要
肛門の病気である痔のひとつです。肛門内部の粘膜が細菌に感染することで化膿し、肛門周囲の皮下組織にうみが広がっていきます。この状態を肛門周囲膿瘍といい、これが慢性化すると、皮膚に穴があき、うみが外にもれ出てしまいます。これが痔瘻です。肛門の内部と周囲の皮膚がトンネルのように貫通した状態になることから「あな痔」とも呼ばれます。
女性よりも男性に多く、根治のためにはトンネルを切除する手術が必要です。放置するとがん化することもあるため、注意が必要です。
原因
痔瘻は、肛門周囲膿瘍により起こります。肛門周囲膿瘍は、肛門内部の小さなくぼみにある肛門腺に、細菌が便と一緒入り込み、炎症を起こすことで発症します。ただし、細菌が入り込んでも必ず発症するわけではありません。肛門腺近くに傷があったり、何らかの原因で抵抗力が落ちていたりした場合に、化膿し、慢性化して痔瘻になります。
また、裂肛、クローン病、結核などが原因で痔瘻を発症することもあります。
症状
肛門周囲膿瘍を発症すると、肛門の周囲が化膿してうみがたまり、熱をもって赤く腫れ上がり、激しい痛みを感じます。その後、腫れた部分に穴があき、うみが外にもれ出てきます。うみが外に出ると痛みは落ち着きますが、うみは出つづけるため下着は常に汚れてしまいます。ほかにも発熱、全身の倦怠感などの症状が現れます。
一度発症した痔瘻は、自然には治りません。きちんと治療せずに放置したままにすると、痔瘻がんに進行することがあります。
検査・診断
問診で症状などを聞きとります。視診により肛門の状態を観察します。外側から見てもわからない場合には、肛門に器具を挿入して観察することもあります。肛門の周囲に触れる触診、肛門から指を入れて直接患部に触れる指診などを行います。
痔瘻の場合、肛門周囲からうみや粘液が出て下着が汚れるなどの特徴的な症状があれば、身体診察の段階で診断をつきます。
治療方針を決めるためには、CT検査やMRI検査などの画像診断でうみのかたまりの大きさ、炎症の広がり、患部の位置などを確認します。潰瘍性大腸炎やクローン病など腸の病気の症状として痔瘻を発症しているケースがまれにあるので、疑わしい場合には鑑別のため大腸内視鏡検査も実施します。
治療
痔瘻は、一度発症すると自然に治ることはほとんどありません。根治には、手術により肛門周囲に形成されたトンネルを取り除くのが一般的ですが、肛門の機能を温存し、これまでどおりに排便できるようにすることが課題となります。肛門は肛門括約筋の働きによって動くため、手術で肛門括約筋が大きく切除されると肛門が緩んでしまうことがあります。
手術法は、肛門括約筋と痔瘻のトンネルを一緒に切除する切開開放法、肛門括約筋を切らずにトンネルだけを切除するくりぬき法があり、痔瘻の位置や大きさなどによって選択します。
近年では、痔瘻のトンネルに糸を通して結び、少しずつトンネルを切り離していくシートン法を選択するケースも増えています。シートン法では、トンネルがなくなるまで2~3カ月ほど時間がかかりますが、括約筋やからだへの負担は少ないとされています。
セルフケア
予防
下痢を起こさないことで細菌感染のリスクを下げることができます。下痢の原因として考えられるものは、暴飲暴食、睡眠不足、ストレスなどです。
アルコールや冷たいもののとりすぎは、腸を刺激します。また、睡眠不足やストレスは自律神経のバランスを乱し、腸にストレスがかかります。便秘も肛門周辺を傷つけ、そこから細菌が入り込むきっかけとなるため、便秘にも気をつけましょう。
食生活を見直し、規則正しい生活を心がけることです。肛門を清潔にすることも大事です。また便意を感じたらがまんせずにトイレに行きましょう。毎日の便通習慣を整えることが予防につながります。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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