直腸脱ちょくちょうだつ
最終編集日:2022/4/4
概要
直腸脱とは、肛門から直腸が出てきてしまう状態です。60歳以上の出産経験のある女性に多くみられ、出産で骨盤底の筋肉が落ちることが原因のひとつと考えられています。
排便時など、いきんだ拍子に腸が外に出ても痛みはほとんどありませんが、この状態が長くつづくと直腸から出血したり排便コントロールがうまくいかなくなったりする場合があります。乳児期に発症した場合は自然に治りますが、高齢になってから発症した場合は治療がむずかしく、多くは手術が必要となります。
原因
直腸脱が起こる原因は、直腸粘膜の緩みと骨盤を支えている筋肉の緩みです。
直腸は骨盤底筋群などによって支えられていて、通常は骨盤のなかに収まっています。簡単に肛門の外に出てしまうことはないのですが、直腸を支えている筋肉などが弱って伸びてしまうと直腸を支えきれなくなって脱出します。
高齢者、経産婦、子宮の手術をしたことがある人などは直腸脱を起こしやすいといわれています。慢性的な便秘により、腹に力を入れる習慣がある人も注意が必要です。
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症状
肛門から直腸が脱出し、触れると肛門にできものができたように感じます。
はじめのうちは排便時だけ出てしまう程度ですが、症状が進むと立っているときや歩いているときにも肛門から腸が出てくるようになり、人によっては常に脱出したままになる場合もあります。3~4㎝程度の脱出から、大きなものでは20㎝以上脱出するケースもあります。
脱出が大きくなると、股の周囲に違和感が生じたり、直腸から分泌される粘液で下着が汚れたりするようになります。症状が進むと直腸の出血や便秘、便がもれてしまう便失禁が起こるなど、日常生活に影響を及ぼします。
検査・診断
まず直腸がどのくらい突出しているかを視診によって確認します。診察時には脱出していない場合もあるため、浣腸で排便を促したうえで肛門の状態を観察する場合もあります。
ほかに肛門を締める力を確認する内圧検査、骨盤の筋肉・構造物の状況を調べるMRI検査などを必要に応じて行います。
直腸脱を起こす原因としてほかの病気が疑われるような場合には、S状結腸鏡検査、大腸内視鏡検査、下部消化管造影検査などを行い、基礎疾患を探ります。
治療
基本の治療法は手術ですが、便秘の症状があり、排便時にいきんでしまうことが原因で脱出していると考えられるときには、まずは便秘を改善して排便習慣を整えるための保存療法を行うこともあります。
保存療法の場合は食物繊維を多く含む食事指導が行われ、下剤が処方されます。
保存療法を行っても直腸脱をコントロールできない場合には、手術になります。手術の方法には、経肛門手術、開腹手術、腹腔鏡手術があります。経肛門手術は腰椎麻酔(下半身麻酔)で行うため、からだへの負担は少なく済みますが、再発することが多くあります。
開腹手術は全身麻酔が必要なため、からだへの負担は大きくなりますが、再発は少ないとされています。
どの治療法を選択するかについては、患者さんの希望や状況も考え、医師と相談しながら決めていきます。
セルフケア
予防
直腸脱を防ぐには、便秘を改善し、排便時のいきみを軽減させることが大切です。食物繊維の多い食生活を心がけ、運動をして腸の動きを促しましょう。
便意を感じたら我慢せずにすぐに排便することも重要です。便秘がひどい場合には、何かほかの病気が隠れている可能性もありますので専門医に相談しましょう。
また、骨盤底筋を鍛えることで脱出を防ぐこともできます。下腹部に力を入れ、尿道や肛門、腟をグッと締めたり緩めたりするだけでも骨盤底筋が鍛えられます。毎日つづけて行うことで効果が得られるはずです。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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