メタボリックシンドロームめたぼりっくしんどろーむ
最終編集日:2023/5/29
概要
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加えて、糖尿病に至らない血糖上昇、高血圧に至らない血圧上昇、脂質異常症のうち2つ以上をあわせもつ病態と定義され、インスリン抵抗性(血糖値を下げる働きをするインスリンの効きが悪い状態)を基盤としています。メタボリックシンドロームは、心血管疾患のリスク因子となり、メタボリックシンドロームのない人の約3倍の発症率、または死亡率とされています。
また、慢性腎臓病(CKD)、高尿酸血症(痛風)、非アルコール性脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などとの関連も指摘されています。
身長と体重をもとにしたBMI(体格指数)で診断する肥満症とは異なった概念で、BMIで肥満がなくてもメタボリックシンドロームが疑われる場合があります。
40~74歳の男性の約2人に1人、女性の約5人に1人はメタボリックシンドローム(予備群も含む)ではないかといわれています。
原因
蓄積した内臓脂肪が原因となります。メタボリックシンドロームの根本にあるのは、内臓脂肪型肥満で、腸間膜を中心とする内臓に脂肪が蓄積し、上半身がふくらむリンゴ型の体形となります。脂肪細胞は、アディポサイトカインという生理活性物質を分泌します。そのなかで善玉と呼ばれるアディポネクチン、レプチンなどはインスリン感受性を上昇させる・摂食を抑制する・エネルギー消費を促進させるなどのプラスの働きをもっています。一方、悪玉と呼ばれるTNF-α、PAI-1などはインスリン抵抗性をひきおこす・動脈硬化を促進させるなど、マイナスに働きます。
内臓脂肪は、皮下脂肪にくらべ、悪玉アディポサイトカインや遊離脂肪酸をばらまきやすく、インスリン抵抗性を増加させます。すると、耐糖能が悪化し、脂質異常症もきたします。インスリン抵抗性をはじめとした代謝異常をひきおこし、動脈硬化を促進させます。インスリンには腎臓での水の再吸収を促す作用もあるので、インスリン抵抗性増加に伴う高インスリン血症では、血圧が上昇します。このように血糖上昇、脂質異常症、血圧上昇は偶然重なるのではなく、内臓脂肪型肥満から派生していきます。
症状
メタボリックシンドロームに特異的な症状はありません。内臓脂肪型肥満を疑わせるような、おなかがぽっこり出た太り方を伴う場合があります。糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併している場合に、それぞれの疾患の症状が現れます。
検査・診断
腹囲を測定し、男性85cm以上、女性90cm以上であり、そのうえで以下の①~③のうち、2つ以上が該当する場合をメタボリックシンドロームと診断します。腹囲の診断基準が男女で異なりますが、これらはCT検査で内臓脂肪量が100c㎡に相当する量を反映した数値です(男性は女性にくらべ、少量の内臓脂肪で腹囲が広がりやすい)。
①血液検査で中性脂肪(TG)値150㎎/dL以上かつ/またはHDLコレステロール(HDL-C)値40㎎/dL未満
②収縮期血圧130㎜Hg以上かつ/または拡張期血圧85㎜Hg以上
③空腹時血糖値110㎎/dL以上
血圧と血糖の基準値は、高血圧および糖尿病の診断基準のそれより低くなっていますが、これは「軽度の異常が重なって生じる」のがメタボリックシンドロームであるからです。また、すでに脂質異常症(高TG血症、低HDL-C血症)、高血圧、糖尿病の治療を受けている場合は、①~③の検査値が基準を下回っていても「該当する」に判断されます。
治療
メタボリックシンドロームの基盤は内臓脂肪の蓄積なので、内臓脂肪を減らすことが対策につながります。食事療法、運動療法を継続して体重管理に努めます。体重を3%減らすだけでも、血糖値やTG値などの有意な改善がみられることが明らかになっています。
高TG血症や低HDL-C血症、高血圧、糖尿病を合併している場合は、それぞれの薬物療法を併用します。
セルフケア
予防
●食生活……適正エネルギー量を守る、動物性脂肪を控えめにして魚や大豆食品を増やす、食塩は1日10g以下、甘いものを控える、食物繊維を積極的にとる(きのこ、こんにゃく、海藻類など)、食用油を不飽和脂肪酸にする、緑黄色野菜を多くとる、1日3食を規則正しくとり、間食や夜食はとらない、アルコールは適量にし、よくかんで腹八分目にする。
●運動……ウォーキング、自転車、ジョギング、水泳などの有酸素運動を1週間に70~100分行う。
2008年から40~74歳を対象に、メタボリックシンドロームに特化した特定健康診査(特定健診)が施行されています。自治体や企業によっては、通常の健康診断に組み込まれている場合もあります。年に1度は受けて、メタボリックシンドローム予備群とわかったら、生活のなかでの改善を実践しましょう。
監修
医療法人青泉会下北沢病院糖尿病センター長
富田益臣
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