男性更年期障害・LOH症候群
だんせいこうねんきしょうがい

最終編集日:2024/5/27

概要

加齢による、男性ホルモン(テストステロン)の分泌減少が原因となって、さまざまな症状が現れる病態を指します。

女性は閉経に伴って女性ホルモンが急激に減少し、更年期障害が現れやすいことがわかっています。一方、男性ホルモンは20代に分泌のピークを迎え、その後はゆっくりと減少していきます。減少が緩やかであるため、女性の更年期障害のような症状は少ないと考えられていましたが、最近では、個人差があるものの多くの男性に現れることがわかっています。

臨床の場では「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群」と呼ばれます。

原因

テストステロンの分泌が減り、血中テストステロン濃度が低下することが原因です。

症状

心身両面にさまざまな症状が現れます。


●体の症状…勃起不全(ED)、筋肉痛・筋力の低下、頻尿、頭痛、めまい・耳鳴り、倦怠感、疲れやすい、発汗・ほてり、腹囲の増加など

●心の症状…性欲の低下、イライラ、うつ、意欲や集中力の低下、記憶力の低下、気分の落ち込み、睡眠障害、不安感など

症状は個人差が大きく、更年期を迎えてもまったく無症状の人もいれば、生活の質(QOL)が低下するほど深刻な症状が現れる人もいます。その点は、女性の更年期障害と同様です。


検査・診断

問診で男性更年期障害が疑われたら、血液検査を行い、総テストステロンと、テストステロンのなかでも男性ホルモンとしての働きが強い遊離型テストステロンの値を調べます。テストステロン値は1日のなかでも時間によって変動するため(日内変動)、午前中に検査します。血中テストステロン値が300~350ng/mL、あるいは遊離型テストステロン値が8.5pg/mL未満の場合に治療を考慮します。わが国の「LOH症候群診療の手引き」(日本泌尿器科学会ほか編集)では遊離型テストステロン値を採用しています。

また、男性更年期障害が加齢によるものか、あるいはほかの疾患によるものかの鑑別のために、黄体化ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)などの測定も行われます。

問診の際に「Aging Males’ Symptoms (AMS)スコア」に記入して、症状を評価することがあります。

治療

遊離型テストステロン値によって、テストステロン補充療法(TRT)、あるいは対症療法を行います。


●遊離型テストステロン値が8.5pg/mL未満……TRTを行います。内服薬や貼付薬(皮膚に貼る)などもありますが、現時点で注射薬のみが保険適用となっています。注射薬以外を希望する場合は、自費診療になることを頭に置いておきましょう。

●8.5~11.8pg/mL……対症療法で経過をみていきますが、症状が強い場合にはTRTを開始することがあります。

●11.8pg/mL以上……症状に合わせた対症療法が中心になります。

TRTは2~4週間に一度、注射をします。TRTだけで改善を図ることは難しく、食事や運動、睡眠などの生活習慣の改善が不可欠とされています。2~3カ月を目安として治療効果を評価します。

また、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などの漢方薬を用いることもあります。


※2024年1月30日時点の内容です。

セルフケア

予防

食生活の見直し、適度な運動の実践、生活リズムを規則正しくする、十分な休養など、生活習慣を改善することが症状の軽減につながることがわかっています。食事では、たんぱく質、ビタミン類、亜鉛を積極的に取り入れるとよいでしょう。

男性更年期障害は性機能の低下だけでなく、心血管障害、糖尿病、脂質異常症、うつ、メタボリック症候群、認知症など、さまざまな病気のリスクを高めることが明らかになっています。40代以降に原因疾患が見つからないのにさまざまな症状に悩まされるようになったら、男性更年期障害を視野に入れて医師に相談してみてください。

監修

小山嵩夫クリニック 院長

小山嵩夫

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