尿道下裂にょうどうかれつ
最終編集日:2023/8/29
概要
男児に先天的に起こる病気です。
膀胱から出た尿道は、陰茎の先端(亀頭先端部)まで伸びて尿の出口(尿道口)をつくります。尿道下裂は尿道口が亀頭先端部よりも手前(下腹部側)に開いている状態を指します。尿道口の位置により、亀頭に近い部位にある「遠位型」と、陰嚢に近い部位にある「近位型」に分けられます。一般的に近位型のほうが重症であると考えられます。
尿道下裂の発症頻度は、約0.3%といわれています。
亀頭部の包皮(亀頭を包む薄い皮膚)の一部欠落や、陰茎の屈曲、停留精巣(陰嚢のなかに精巣が入っていない)、陰嚢の形成異常などを伴うことが多いとされています。
原因
原因は不明です。胎児期の性ホルモンの異常や母体の内分泌異常などの影響で、外性器の発育分化が正常になされなかったなどが考えられていますが、明らかになっていません。低出生体重児に多くみられることがわかっています。
症状
排尿の際に尿が飛び散る、立って排尿できないなどがみられます。乳児検診の際に指摘される、おむつ替えのときに保護者が違う場所からの排尿に気づくなどで発見されます。成人まで放置されたケースでは、性行為ができないこともあります。
検査・診断
尿道口の位置や陰茎の屈曲、包皮の欠落など、形状の異常を確認します。尿道下裂では、外陰部の異常や思春期の第二次性徴の異常を伴う「性分化疾患」の場合があるため、超音波(エコー)検査、MRU検査(泌尿器科で用いられるMRI検査を指す)などの画像診断や内視鏡検査、染色体検査などでくわしく病態を調べます。
治療
治療は、尿道を再建し、正常な形態にする手術が行われ、機能面の改善(立って排尿ができる、尿道狭窄・尿量低下が起こらない、陰茎屈曲による性交障害がない)や、審美面での改善が目的となります。
尿道口の位置や陰茎の屈曲度合い、形態異常の程度などによって、1期手術(1度の手術)で終わるか、2期手術が必要になるかが判断されます。2期手術の場合、1回目に陰茎屈曲を改善し、2回目に尿道の再建を行うことが多いようです。
手術の時期は、生後6~24カ月が推奨されていますが、尿道下裂の重症度や患児の状態によって選択されます。亀頭部の横径が14㎜未満の場合は、術前に男性ホルモン(テストステロン)を投与して一時的に陰茎を大きくしてから手術を行うこともあります。
尿道下裂の手術は精緻な技術が必要となる専門性の高い手術です。手術の成功率や合併症(尿道狭窄、尿道皮膚瘻〈尿道の途中から尿が漏れる〉、屈曲残存など)のリスクを考慮して、症例数の多い医師・医療機関を選ぶ必要があります。
セルフケア
病後
術後は亀頭が露出した状態になって、大人の陰茎のような見た目になります。定期的に排尿などに異常がないかを観察していきます。性交障害がなければ、子どもをもつことも可能です。
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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