男性不妊だんせいふにん
最終編集日:2023/1/18
概要
不妊症とは「避妊しない性行為によって少なくとも12カ月経過しても妊娠に至らない状態」と定義され、男性不妊とは、不妊の原因が男性側にあるケースのことを指します。
WHO(世界保健機構)の報告によると、男性にのみ不妊原因がある場合が24%、男女ともに問題がある場合が24%と、不妊症の半数近くが男性に原因があるとしています。男性不妊の多くは、良好な精子を多数つくる機能が低下していることによるもので、最近では喫煙や男性の加齢、過度のアルコール摂取、肥満、ストレスなどもその原因と考えられています。
原因
男性不妊症の原因は、以下の3つに分類されます。
●精子をつくる機能の低下(造精機能障害)
良好な精子をつくる機能が低下してしまう状態を指し、男性の不妊原因のおよそ80%以上を占めるといわれています。造精機能障害には、精子の数が少ない「乏精子症」、数的には問題がないが精子の活性が低い「精子無力症」、精液のなかに精子が存在しない「無精子症」などがあります。機能が低下する原因のおよそ半数は不明ですが、精索静脈瘤、下垂体性性腺機能低下症、精巣形成不全症候群といった疾病が原因となる場合もあります。
●勃起や射精ができない(性機能障害)
勃起や射精など満足な性行為ができない場合も不妊の原因になります。多くは病気やストレスが原因で、陰茎への血流が減少することによってひきおこされ、勃起障害(ED)や射精時に精液が体外ではなく、体内(膀胱内)へ戻ってしまう逆行性射精障害、性交時に射精することができない腟内射精障害などがあります。
●精子の通り道が詰まっている(精路閉塞障害)
精子の通り道が狭窄、あるいは閉塞しているため、射出された精液中に精子がみられない状態です。射精はできるので、精液検査をして初めて判明します。
症状
精索静脈瘤は、ほとんどの場合が無症状です。まれに陰嚢や鼠径部に違和感や鈍痛を感じることがあります。とくに立った状態で長い時間を過ごした後などにみられます。
精索静脈瘤で問題となるのは、精子をつくり出す働きに悪影響を及ぼし、不妊症の原因となることです。これは精巣の血流悪化や精子をつくり出すのに適した温度より高い温度になってしまうことで、精子をつくる機能が低下したり、精子の成熟が妨げられたりすることによって起こると考えられています。
検査・診断
まず、性生活に関する問診や視診・触診による精巣、精巣上体などのチェックを行います。つづいて、精液検査を行い、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率を確認します。この検査で精子濃度が1,600万/mL未満だと乏精子症、精子運動率が42%未満だと精子無力症、正常形態の精子が4%未満だと奇形精子症、精液中に精子がまったく存在しない場合、無精子症と判定されます。
このほか、精索静脈瘤が疑われる場合には、超音波(エコー)検査、ホルモン分泌に異常がないかを調べるために血液検査を行うことがあります。
治療
男性不妊では原因が判明している疾患につき、次のような治療を行います。
●薬物療法
逆行性射精では、三環系抗うつ薬であるイミプラミン(トフラニール)を使用します。活性酸素による精子のDNAに損傷がある場合、ビタミン剤、グルタチオン、亜鉛などを補給します。また、乏精子症・精子無力症には、漢方薬が処方されることもあります。
性機能障害には、ED治療薬のPDE5阻害薬を使用します。
●手術療法
精索静脈瘤では、逆流する血管を結紮(けっさつ)する手術を行います。精路閉塞障害に対しては、精液の通り道をつくる精路再建術を行います。また、無精子症で、非閉塞性無精子症が疑われる場合は顕微鏡を使用しての手術(micro TESE)を行い、精巣を切開して精子を回収します。
セルフケア
予防
男性不妊の原因の約80%が造精機能障害です。そのうちの多くは原因不明ですが、日常生活において以下のような工夫をすることで予防につながります。
●禁煙する。たばこは造精機能に直接ダメージを与える
●長風呂、サウナは避ける。長時間の高温の入浴は精子にダメージを与えるので控える
●精巣を温める下着をつけない。ボクサータイプよりトランクスタイプを使用する
●睡眠は1日7時間程度の長さで、決まった時間に就寝、起床する
●自転車、バイクに長時間乗らない
●鉄・亜鉛・ビタミンを十分に補足できるバランスのよい食事をとる
●深酒しない
監修
小山嵩夫クリニック 院長
小山嵩夫
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