慢性甲状腺炎(橋本病)
まんせいこうじょうせんえん・はしもとびょう

最終編集日:2025/12/18

概要

甲状腺で産生される甲状腺ホルモンは、脳、心臓、肝臓、腎臓などの全身の代謝を調節しています。この甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気が慢性甲状腺炎で、自分の免疫(自己免疫)が甲状腺を攻撃することで生じます。日本ではもっとも頻度の高い甲状腺疾患のひとつで、一般に「橋本病」と呼ばれます。多くは甲状腺機能が正常ですが、加齢とともにゆっくり甲状腺機能が低下することがあります。30~40歳代の女性に多いことも特徴です。

原因

慢性甲状腺炎(橋本病)は自己免疫疾患ですが、免疫異常が生じる理由は完全にはわかっていません。体質や遺伝のほか、強いストレス、妊娠や出産、ヨード過剰摂取(海藻類や薬剤・造影剤)などが発症・増悪に関与すると考えられています。

症状

甲状腺の慢性炎症により甲状腺腫(腫れ)を認めることがあります。頸部に圧迫感や違和感を自覚する場合もあります。

進行して甲状腺機能低下症になると、代謝が低下し、むくみ、無気力、疲労感、冷え、体重の増加、便秘、かすれ声などの症状がみられます。女性では月経異常や、うつ病・認知症と誤解される場合もあります。

検査・診断

触診で頸部の甲状腺の腫れ(甲状腺腫)を調べます。腫れやしこりを感じた場合は、超音波検査を行い確認します。血液検査ではTSH、FT4、FT3を測定し、甲状腺機能の状態を調べます。診断には、抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)と抗サイログロブリン抗体を測定し、抗体陽性で、超音波所見や甲状腺腫を伴えば、慢性甲状腺炎と診断します。

治療

甲状腺腫があっても、甲状腺機能が正常であれば治療は不要です。

甲状腺機能低下症を認める場合は、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)を補充し、TSHの値を見ながら量を調節します。

慢性甲状腺炎自体を治す薬はありませんが、必要なホルモンを補うことで日常生活の質は十分に保つことができます。軽度のTSH高値の場合(潜在性甲状腺機能低下症)では、年齢、症状、妊娠などの有無を考慮し、治療の要否を判断します。

セルフケア

療養中

甲状腺ホルモンが安定するまでは、過度のストレスや睡眠不足を避けるよう心がけましょう。ヨード(ヨウ素)は甲状腺機能に影響するため、治療中は過剰なヨード過剰摂取は避けます。ただし、一般的な食事の範囲では必要以上に厳しく制限する必要はありません。

※昆布・ワカメ・ひじきなどの大量摂取や、ヨード含有のサプリメント、うがい薬の使用が問題になるケースもあります。

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監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣