甲状腺機能低下症
こうじょうせんきのうていかしょう

最終編集日:2023/3/20

概要

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの不足からくる病気です。甲状腺ホルモンは成人においては代謝維持に不可欠の働きをしますが、甲状腺機能が低下するとホルモン分泌が不足するため、全身にいろいろな症状が現れます。

原因によって、甲状腺の異常が原因となる「原発性甲状腺機能低下症」と、脳の下垂体などの異常が原因となる「中枢性甲状腺機能低下症」に分類されます。原発性甲状腺機能低下症は、成人女性の0.7~0.9%、成人男性の0.2~0.4%に認められ、加齢に伴って発症頻度は高くなるとされています。


なお、甲状腺ホルモンの分泌には異常がないのに、十分に作用せずに機能低下を招く「甲状腺ホルモン不応症」は先天性の疾患で、難病指定されています。

原因

原発性甲状腺機能低下症の原因としてもっとも頻度が高いのは、慢性甲状腺炎(橋本病)です。自己免疫疾患で、発症の原因はわかっていません。そのほか、甲状腺機能低下の原因となるものは、甲状腺摘出術後、放射性ヨウ素内用療法後、頸部放射線外照射後などの、医療行為が原因となるものや、免疫チェックポイント阻害薬などの薬の副作用として現れるものなどがあります。

また、海藻(昆布)やヨード卵などヨウ素を多く含む食材を大量に摂取したり、ヨードを含むうがい薬を大量に継続して使用していることが発症の原因となることもあります。


中枢性甲状腺機能低下症は、下垂体腫瘍、頭部外傷、くも膜下出血などが原因でひき起こされることがあります。

症状

疲れやすさ、無気力、記憶力低下、眠気、動作緩慢、寒がり、むくみ、体重増加、徐脈、便秘、嗄声(させい:声がれ)などが現れます。女性では月経不順、不眠などを認めることもあります。軽度の場合は甲状腺の病気と気づかずに不定愁訴と捉えられて、診断・治療に至らないケースも多くみられます。橋本病は遺伝的要素が強いこともあります。また前頸部にびまん性の、腫れた甲状腺を認めることが多いですが、萎縮してほとんど触れないこともあります。

検査・診断

血液検査で、血中の甲状腺ホルモン値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値を調べます。遊離T4(FT4)が低値でTSHが高値であれば、甲状腺機能低下症と診断されます。


さらに原因疾患の特定とほかの甲状腺疾患の鑑別のために、自己抗体検査、甲状腺超音波検査、甲状腺シンチグラフィなどが行われます。橋本病では抗サイログロブリン抗体(TgAb)または抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)が認められます。


また、甲状腺機能低下症には、一過性のものと永続性のものがあります。一過性のものには無痛性甲状腺炎、出産後自己免疫性甲状腺症候群、亜急性甲状腺炎の回復期などがあります。治療内容にもかかわるため、一過性かどうかの診断も重要です。

FT4値は基準値で、TSHが高い場合は「潜在性甲状腺機能低下症」と診断されます。女性に多く、健康な人の4~20%にみられるとされています。

治療

甲状腺の機能正常化を目的に薬物治療を行います。甲状腺ホルモン製剤であるレボチロキシンナトリウムである合成T4製剤を服用します。少量から始めて、2~4週ごとに様子をみながら増量していきます。飲みあわせに注意が必要な薬があるため、必ず服用中の薬を医師に報告しましょう。永続性の甲状腺機能低下症では長期間の服薬が必要になります。


一過性で症状が軽度であれば、基本的に治療は行われません。症状が強い場合には、通常処方よりも少ない量の合成T4製剤を服用し、経過観察します。


ヨウ素の過剰摂取が疑われる場合には中断し、1カ月くらい経ってから再検査します。ただし妊娠中の場合は、摂取の中断とともに合成T4製剤の治療を開始します。


中枢性甲状腺機能低下症の場合は、原因疾患の治療を中心に、合成T4製剤の服用を行います。潜在性甲状腺機能低下症でTSH値が継続的に高い場合や、妊娠中、または妊娠を望む場合には合成T4製剤での治療を行います。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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