甲状腺腫瘍こうじょうせんしゅよう
最終編集日:2023/3/27
概要
甲状腺にできる腫瘍には、良性のものと悪性のものがありますが、近年は超音波(エコー)やCTなどの画像検査の増加に伴い、偶発的に甲状腺腫瘍が発見されるようになりました。
良性のものでは濾胞腺腫(ろうほうせんしゅ)、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ )、甲状腺嚢胞などがあります。悪性のものとして甲状腺がん(甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がん、甲状腺未分化がん、甲状腺髄様がん、リンパ腫)が挙げられますが、甲状腺腫瘍の約10%を占める程度にとどまります。わが国における甲状腺がんのがん全体に占める割合は約1.4%で、人口10万人当たり7.1人(2005年)です。男性よりも女性は約3倍、甲状腺がんの発症頻度が高く、30代から急増し、60代後半から70代前半がピークとなります。甲状腺がん全体の5年生存率は90%以上ですが、その組織によって異なります。
原因
遺伝子の異常が指摘されていますが、詳しい原因は明らかになっていません。
若い時分に大量の放射線を被曝することはリスクになるとされています。
一部の甲状腺がん(甲状腺髄様がん)は遺伝的要素が強いといわれますが、多くは遺伝とはあまり関係がありません。
症状
首の前の一部分が限局性に腫れたり、しこりを触れたりして気がつくこともあります。しかし多くは、初期には症状に乏しく、頸部の触診や、動脈硬化の評価のための頸動脈超音波検査などで偶然見つかることがほとんどです。
進行してくると、声のかすれ(嗄声:させい)、のどが詰まった感じ、飲み込みにくさ、血痰などが現れることがあります。
中毒性多結節性甲状腺腫(プランマー病)はまれな良性の甲状腺腫瘍ですが、甲状腺ホルモンを過剰に産生するため、甲状腺機能亢進症(甲状腺中毒症 )のような症状(動悸、頻脈、多汗、体重減少など)が現れます。とくに数カ月で急速に大きくなる場合は、甲状腺悪性リンパ腫や甲状腺未分化がんなど、重篤な疾患を念頭において検査します。
検査・診断
問診では、腫瘍の大きさの変化、痛みの有無、声の変化が重要です。視診と触診で甲状腺の腫れと動きをみます。甲状腺の状態を調べるには頸部超音波検査がもっとも有用で、甲状腺の大きさ、腫瘍の大きさ、位置、性質、リンパ節への転移の有無などを評価します。また、血液検査で甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの値も調べます。
確定診断として、細い針を甲状腺に刺して組織を採取し、病理検査を行う「穿刺吸引細胞診」やCT、MRI、血液検査で腫瘍マーカー値の測定も行われます。
もっとも重要なのは、腫瘍が良性か悪性かの診断です。
治療
●良性腫瘍
外来で経過観察を行います。半年ごと、1年ごとなど、病状によって通院の頻度が決められます。
良性で手術の適応になるのは、腫瘍の大きさが4cm以上/腫瘍が硬く充実性(腫瘍の内部が密)/大きくなるなど経過観察中に変化がみられる/腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌するなどの場合です。甲状腺嚢胞では、皮膚から針を刺して腫瘍にエタノールを注入して縮小・壊死させる経皮的エタノール注入療法(PEIT)が行われることもあります。
●甲状腺がん
組織によって手術、放射線治療、化学療法が選択されます。手術では、外科的に腫瘍を切除し、術後の補助療法として、放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)や放射線照射を行って再発率を低下させることもあります。
悪性度の高いがんやすでにリンパ節転移がある場合には、リンパ節郭清も行います。
セルフケア
病後
治療後の経過観察の方法ですが「これのみですべての再発がわかる」という検査はありませんが、1年に1回の胸腹部CT検査と、半年に1回の甲状腺超音波検査は行っておくとよいでしょう。
監修
医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長
富田益臣
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