亜急性甲状腺炎
あきゅうせいこうじょうせんえん

最終編集日:2022/4/6

概要

亜急性甲状腺炎は、かぜなどをきっかけに起こることがある病気です。甲状腺内に炎症が起きることで、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出てしまい、一過性の甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)の症状になります。30~40歳代の女性に多くみられ、甲状腺が硬く腫れたり、その部位に痛みを感じたりするようになります。ほとんどが自然に回復しますが、症状が重ければ治療が必要です。

原因

亜急性甲状腺炎の原因は、はっきりとしていません。かぜのような症状からひきつづいて起こることがよくあるため、ウイルスが原因となり、特定の遺伝的背景が関与しているのではないかと考えられています。

症状

甲状腺中毒症の症状と同様に動悸、多汗、全身に倦怠感を感じるほか、発熱と甲状腺に硬い腫れや痛みが生じるのが特徴です。甲状腺の痛みは片側に始まり、反対側に移動することが特徴で、1~2カ月で自然に治まります。甲状腺機能の回復には、甲状腺ホルモンの分泌を抑えるために一時的に分泌量を低下させ、その後、数カ月をかけて機能を正常に戻します。しかし、甲状腺ホルモンの分泌量が低いままの状態がつづいてしまうこともあり、そのときには甲状腺ホルモン剤を服用する必要があります。



検査・診断

診断には、血液検査、超音波検査、アイソトープ検査(放射性ヨウ素)を行います。

●血液検査

炎症の指標であるCRP(血清たんぱくの1種)や赤沈の値を調べます。甲状腺の細胞が壊れると血中の甲状腺ホルモンやサイログロブリンが高い数値を示します。

●超音波検査

甲状腺の腫れや炎症の様子を調べます。

●アイソトープ検査

甲状腺ホルモン値が高くなるほかの病気との鑑別のために行います。


治療

数カ月で自然に治まるため、対症療法が中心です。

高熱や動悸などつらい症状がある場合は、薬物療法を行います。症状が軽ければ、頭痛薬として使用される非ステロイド系の抗炎症剤を用いますが、強い痛みを感じるときは副腎皮質ホルモン剤を投与します。また、動悸、息切れなどの甲状腺中毒症の症状が強いときには、βブロッカーを使用することもあります。ホルモン剤の服用によって痛みや発熱は改善しますが、すぐに薬の量を減らしたり服用を中止したりすると、ぶり返してしまうこともあるため、症状が改善しても薬は徐々に減らしてから中止するようにしましょう。


セルフケア

病後

ほとんどの場合、炎症は数カ月で治まり、甲状腺ホルモン値も正常に戻ります。甲状腺機能は、甲状腺ホルモンの分泌を抑えるために、一時的に分泌量が低下してから数カ月かけて正常に戻ります。しかし、甲状腺ホルモンの分泌量が低いままの状態が一過性ではなく、永続的に不足する甲状腺機能低下症となってしまうこともあり、その場合には甲状腺ホルモン剤の服用が必要となります。

再発することはほとんどありませんが、再発しやすい体質もあり、10年以上経ってから再発する可能性もあります。のどの腫れや発熱症状、動悸や息切れなど、症状に気をつけておくことが大切です。


監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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