マイコプラズマ肺炎まいこぷらずまはいえん
最終編集日:2026/3/13
概要
マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニアエ」という非常に小さな微生物に感染して起こる肺炎です。一般的な「細菌性肺炎」とは性質が異なるため、医学的には「非定型肺炎」というグループに分類されます。
かつては4年ごとのオリンピックイヤーに流行したため「オリンピック病」とも呼ばれましたが、近年はその傾向が崩れ、毎年一定数の患者が発生しています。子どもや若い世代に多いのが特徴ですが、免疫力が落ちた高齢者も注意が必要です。
原因
原因となるマイコプラズマは、ウイルスと細菌の中間のような性質を持っています。
・潜伏期間: 2〜3週間(ほかのかぜに比べて長め)
・感染経路: せきやくしゃみによる「飛沫(ひまつ)感染」や、病原体がついた手で目や口に触れる「接触感染」
・流行の場: 学校、職場、家庭内など、密閉された空間で長時間一緒に過ごす場所で広がりやすい(クラスター化しやすい)のが特徴
症状
長引く「激しく乾いたせき」が特徴で、主な症状として、発熱、全身のだるさなど「肺炎」の症状が現れます。
・せきの特徴: 最初は「コンコン」という乾いたせきですが、次第に激しくなり、熱が下がった後も3〜4週間長引くことがあります。
・注意すべき合併症: 頭痛や嘔吐が激しい場合は、まれに「髄膜炎(ずいまくえん)」の疑いがあります。
また、まれに中耳炎、関節炎、心筋炎、重い発疹(スティーブンス・ジョンソン症候群)などを合併することがあるため、おかしいと感じたら早めに医師に相談しましょう。
検査・診断
胸部X線やCTによる画像検査で、肺に影がないかを確認します。胸部X線で肺炎が確認できない場合でも「マイコプラズマ気管支炎」の場合があります。
・迅速診断キット(イムノクロマト法):のど・鼻の奥を綿棒でぬぐう検査で、約20分で結果が判明します。ただし、発症初期は偽陰性(感染しているのに検査では陰性になる)になる可能性があります。
・咽頭ぬぐい液によるPCR検査:感度が高い検査です。専門の検査機関に検体を送って判定します。
・血液検査(抗体検査):血液中のマイコプラズマ抗体(IgM抗体など)を測定します。症状が出始めた急性期と、2週間ほど経過した回復期に2回目の採血を行い、抗体価の上昇を見て診断します。
治療
一般的なかぜ薬や、通常の肺炎で使われるペニシリン系などの抗菌薬(抗生物質)は効果がありません。
おもな薬としてマクロライド系抗菌薬が第一選択となります。また、近年、マクロライド系が効かない「耐性菌」が増えています。その場合は、ニューキノロン系やテトラサイクリン系といった別の抗菌薬に切り替えます。
子どもに対しては、テトラサイクリン系は歯の色への影響などが懸念されるため、医師が年齢や症状を見て慎重に判断します。
多くは飲み薬で治りますが、呼吸が苦しい場合や水分がとれない場合は入院治療が必要となることもあります。
セルフケア
予防
現時点で有効なワクチンはありません。手洗い・うがい、感染流行時のマスクの着用など、感染予防の基本を徹底することが大切です。そのうえで、以下のような対策もとりましょう。
・休養: せきで体力が奪われます。十分な水分補給と睡眠をとりましょう。
・二次感染防止: 家族にうつさないようタオルの共有を避け、室内ではこまめに換気を行いましょう
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎