サイトメガロウイルス肺炎さいとめがろういるすはいえん
最終編集日:2026/3/13
概要
サイトメガロウイルスはヘルペスウイルスの仲間です。非常にありふれたウイルスで、多くの大人がすでに感染していますが、健康な人であれば感染しても症状が出ることはほとんどありません。
しかし、病気や免疫を低下させる治療(抗がん剤治療など)によって、「免疫力(病気と戦う力)」が著しく低下している状態でウイルスに感染したり、体内に潜んでいたウイルスが再び暴れだしたりすると、肺に炎症を起こして「サイトメガロウイルス(CMV)肺炎」を発症することがあります。
原因
このウイルスは、感染している人の唾液、尿、母乳などに含まれています。
・初めての感染:ウイルスが付着した手で口に触れることなどにより、体内に入ります。
・潜伏と再活性化:一度感染すると、ウイルスは生涯にわたって体の中に隠れ続けます(潜伏)。普段は、自己の免疫によって抑え込まれていますが、免疫力が落ちたタイミングでウイルスが再び活動を始める(再活性化)ことが、発症のおもな原因となります。
●発症しやすい人
・臓器移植や骨髄移植を受け、免疫抑制剤を使っている人
・抗がん剤治療を受けている人
・ステロイド薬を長期間・大量に使用している人
症状
初期症状はかぜや通常の肺炎と似ていますが、適切な対処を行わないと呼吸が苦しくなる症状が出るため、注意が必要です。
おもな症状として、 発熱、乾いたせき、倦怠感(だるさ)があります。進行すると、 息切れ、呼吸困難、頭痛、筋肉痛がみられるようになります。
検査・診断
サイトメガロウイルスは多くの人の体内に「もともといる」ため、ウイルスが見つかっただけでは肺炎だと断定することはできません。そのため、ウイルスが生体に悪さを働いているかどうかを確認するため、いくつかの検査を組み合わせて診断します。
・画像検査:胸部X線(レントゲン)やCTで肺の状態を確認します。
・血液検査:血液中にウイルスの成分(抗原)が増えていないかを調べる「抗原検査(CMVアンチゲネミア法)」を行います。「抗原検査の陽性」だけでサイトメガロウイルス肺炎を確定診断することはできません。「感染」の診断はできますが、「発症」はウイルスが生体に悪さを働いている場合です。
・精密検査:診断が難しい場合、気管支内視鏡を使って肺の洗浄液を採取し、顕微鏡でウイルスに感染した特殊な細胞がないかを、くわしく調べます。
治療
ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」(点滴や飲み薬)による治療を行います。
ガンシクロビル(静注)が第一選択薬として用いられ、軽症や維持期にはバルガンシクロビル(経口)が使われます。ウイルスのDNA複製を阻害し、増殖を抑える効果があります。
対症療法として、 呼吸が苦しい場合は酸素吸入や人工呼吸器によるサポートを行うこともあります。また、免疫抑制剤を使用している場合は、可能であれば薬の量を調整して免疫力の回復を図ります。
セルフケア
予防
免疫力が低下している人は、日頃からの対策が重要です。手洗い・うがい、マスクの着用など、感染予防の基本を徹底することが大切です。そのうえで、以下のような対策もとりましょう。
・体調管理:十分な睡眠や栄養摂取による規則正しい生活で、免疫力を維持することが大切です。
・人混みを避ける:免疫抑制剤などの治療中は、感染リスクを減らすために人混みを避けてましょう。
・早めの受診:「ただのかぜかな?」と思っても、せきや熱が続く場合は早めにかかりつけ医に相談してください。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎